出版社内容情報
どうしてぼくに。そう言いかけて道雄の言葉が止まってしまう。染香の瞳が、憂いばかりでないものを湛えて揺れていた。今にも零れ落ちそうなもの。両掌に受けて、飲み干してしまいたいと思わせる何かだった。道雄はモンブランをすばやく胸のポケットにしまい、染香へ腕を伸ばす。刹那としかいいようのない一瞬に、ふたりの唇が合わさった。
──『なんじゃもんじゃの木』より
内容説明
凛と華やぐ艶やかな微笑み。匂やかに薫る花街の記憶。長編三部作『向島』『墨堤』『言問』の領家高子が現代の花街をたずねてつづった、珠玉の現代花街小説集。
著者等紹介
領家高子[リョウケタカコ]
1956年、東京生まれ。東京外国語大学ドイツ語学科中退(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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