内容説明
「生き生き」とした言葉の裏側を覗いてみると、そこには死に絶えつつある思想の死相があらわれている。本書に登場する10人の知の巨人は、「生き生き」とした言葉に対して、どのような警鐘を鳴らしてきたのか。思想が死相にひんする現代日本の状況に、彼らの「死の思想」は何を語りかけるのか。日本の思想は、死相から甦ることができるのか。現代思想研究の最先端を走る仲正昌樹が、知の巨人の思想を新たな切り口で解説する。わかりたいあなたに送る、新しい現代思想の入門書。
目次
1 「大きな正義」の落とし穴―アドルノの思想を読む
2 「進歩」は「回帰」であることへの「目覚め」―ベンヤミンの思想を読む
3 「人間」の限界―アーレントの思想を読む
4 「死」のエクリチュール―デリダの思想を読む
5 「人間の終焉」とは何か?―フーコーの思想を読む
6 バカボンのパパは超人なのか―ニーチェの思想を読む
7 亡霊としての「資本」―マルクスの思想を読む
8 利用される哲学―ハイデガーの思想を読む
9 底なし理論としての精神分析―ラカンの思想を読む
10 理性の暴走に歯止めをかける―スローターダイクの思想を読む
著者等紹介
仲正昌樹[ナカマサマサキ]
1963年広島県生まれ。東京大学総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。金沢大学法学部教授。専攻は、政治思想史、比較文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
44
現代思想の10人を軽妙に論じている。10人中、7人がドイツ(アドルノ、ベンヤミン、アーレント、ニーチェ、マルクス、ハイデガー、スローターダイク)と、フランスの3人(デリダ、フーコー、ラカン)を上回っているのは著者がドイツ語圏の研究者だからだろう。この中で最後のスローターダイクだけがややマイナーだ。この思想家の考えは、イデオロギー批判を徹底することで、人びとを理想の社会へ導くことができると信じて突き進んできた啓蒙的理性をシニカルに批判する。この10人の中で著者に最も考え方が近いどころか、ここまで読んで来た読2024/05/10
カザリ
30
アーレントの100分で名著を観てからこの本でアレントの思想を補完しました。これもすごくわかりやすい本でアレント思想の概観を掴むのに助かりました2019/04/04
デンプシー
3
都会人が求める自然は、都会の価値観や感受性が創り出す自然であり、いざ自然を求めていっても失望するだけ。またそして自然を求めに行く。あるシステム内で生まれるニーズはそのシステムに多分に影響されていることを自覚すること。しかし、システムは完璧ではなくガラクタや残余物を生み出す。これらはシステムの秩序外のものであり、これらに触れることでシステムをメタ認知する契機が生まれる。2024/10/06
wanted-wombat
1
エクリチュールという死んだ事象を前提に置くところから始まる。「生き生き」した発言というものが自分にはまだ区別がつかないな、と勉強不足を痛感させられる。仲正さんの書籍らしく、すごく刺激的だった。2013/03/20
home alone
1
10人の思想家の考えを羅列した本。仲正さんにしては文句が少ない本だった。結構いいけどページ数関係で詳しくはない。2012/10/21