出版社内容情報
本書の特色
このような分野で応用されています 。
薄膜・厚膜、スパッタリング、コーティング、エッチング、イオンインプランテーション、光電面、二次電子面、接着、摩擦、摩耗、触媒、電界効果トランジスター、薄膜トランジスター、薄膜電場発光素子、トンネル接合、ヘテロ接合、ショットキーバリヤーダイオード、表面安定剤、電子写真等。
発刊に際して
科学技術の進歩に伴い固体表面の研究は、基礎科学の面においてもまたその工業面での応用(固体電子素子、
薄膜気相成長、材料使用技術、触媒技術、超高真空技術、宇宙関連技術など)という実用的な面からも、多くの分野に貢献するようになってきた。
長らく表面研究は、実験を行うにも、理論的解釈をするにしても、泥沼であると考えられてきた。実験面では、超高真空技術の発展が表面研究を容易にした。10-6Torr程度の圧力中では金属の清浄表面は約1秒間で気体の単分子層で完全に覆われるが、10-10Torr程度の圧力中では数時間を要する。それゆえに原子的に清浄な表面の作成が可能となり、表面特有の観測手段も急速に進歩した。今やはっきりと表面構造を理解して原子的な尺度で表面現象の研究が行われるようになり、表面科学という研究分野が形成されている。定量的な理論計算は比較的最近までほとんど無かった。これは表面構造に関する情報が少なかったことにも依るが、本質的には結晶内部に比べて表面では対称性が低いためであった。しかし、最近の電子計算機の発達が困難な計算の処理を可能にしつつある。
もとよりこのように急速に進歩しつつある表面科学の全貌を一冊の本にまとめることは不可能である。本書では固体表面、特に工業面でも重要な役割を演じている金属や半導体などの単結晶表面、における化学反応の微視的機構を解説したい。我が国には固体表面の構造や物性に関する入門書は幾つかあるが、反応に関する入門書はほとんど無いのが現状である。この機会に是非研究開発の一助となれば幸いである。
目次
1.高分解能電子エネルギー損失分光
1.1 低速電子による表面振動励起の機構
1)表面振動励起の機構
1.1)長距離双極子散乱
1.2)短距離衝突散乱、熱散漫散乱
1.3)短距離負イオン共鳴散乱
1.2 高分解能電子エネルギー損失(表面振動)スペクトルの 解析法
1)吸着状態・位置・構造の決定法
1.1)v1>v2>v3>v4則
1.2)気体、粉末状金属-気体系、金属錯体などの分光学的データとの比較
1.3)表面部分群相関表
1.4)表面点群の表現の指標表と基準振動モードの数
1.5)Teller-Redlich則(積の法則)
2)結合距離、結合角の決定法
2.1)格子力学的計算
2.2)Badger の規則
3)結合次数の決定法
3.1)力の定数と結合次数との関係
3.2)気体分子、金属錯体などの分光学的データとの比較
4)結合エネルギーの決定法
4.1)力の定数と結合エネルギーとの関係
4.2)結合次数と結合エネルギーとの関係
4.3)Birge-Sponer 近似
5)倍音、結合音、多重損失、フェルミ共鳴
5.1)倍音
5.2)結合音
5.3)多重損失
5.4)フェルミ共鳴
6)吸着粒子-基板間、吸着粒子-吸着粒子間相互作用による振動数のシフト
6.1)吸着粒子-基板間相互作用による振動数のシフト
6.2)吸着粒子-吸着粒子間相互作用による振動数のシフト
7)エネルギー損失ピークの幅のひろがりの原因
7.1)減衰機構による幅のひろがり
7.2)減衰機構以外の理由による幅のひろがり
1.3 電子を用いて表面フォノンを調べる
1)表面フォノンの理論的取扱い
1.1)弾性連続体理論
1.2)格子力学理論
1.3)長距離力の関与する表面フォノン
2)実験方法
2.1)測定原理
2.2)実験装置
3)測定例
3.1)Ni(100)清浄面の分散関係
3.2)Ni(100)C(2×2)-O面の分散関係
3.3)GaAs(110)壁開面のフューシュ・クリーワー表面フォノン
3.4)Si(111)(2×1)壁開面の表面フォノン
3.5)Pt(111)ステップ面の表面フォノン
2.遷移金属表面における表面反応の微視的機構
2.1 化学吸着の理論
1)化学吸着の電子状態理論
2)原子の化学吸着
3)分子の化学吸着
2.2 金属表面上における吸着粒子間相互作用
1)直接静電相互作用
2)直接および間接軌道再混成
3)間接格子媒介相互作用
4)共吸着
2.3 吸着原子・分子の振動の解析例
1)吸着位置の決定
2)炭化水素の吸着構造と軌道再混成
3)未知の表面吸着種の同定
4)吸着粒子-基板間の水素結合
5)倍音、結合音、多重損失
2.4 有機分子の吸着状態と表面反応 -高分解能電子エネルギー損失(表面振動)分光による-
1)高分解能電子エネルギー損失分光(EELS)
2)有機分子の吸着状態、表面反応
2.1)メタン、CH4
2.2)アセチレン、C2H2
2.3)エチレン、C2H4
2.4)シクロプロパン、C3H6
2.5)ベンゼン、C6H6
2.6)ビリジン、C5H5N
2.7)ギ酸、HCOOH
2.8)メタノール、CH3OH
2.9)ホルムアルデヒド、H2CO
2.10)アセトン、(CH3)2
2.11)ケテン、CH2CO
2.12)アセトニトリル、CH3CN
2.5 遷移金属清浄表面および修飾表面とエチレンとの相互作用
1)実験方法
2)遷移金属清浄表面とエチレンの相互作用
2.1)Pd(110)清浄面
2.2)Pd(110)清浄面とエチレンの相互作用
2.3)その他の遷移金属清浄表面とエチレンの相互作用
3)アルカリ金属修飾面とエチレンとの相互作用
3.1)Pd(110)(1×2)-Cs面
3.2)Pd(110)(1×2)-Cs面とエチレンの相互作用
3.3)その他のアルカリ金属修飾表面とエチレンの相互作用
4)水素修飾表面とエチレンの相互作用
4.1)Pd(110)-H表面
4.2)Pd(110)(2×1)-H面とエチレンの相互作用
4.3)その他の水素修飾面とエチレンとの相互作用
5)最近の動向・将来の展望
5.1)酸素修飾面とエチレンの相互作用
5.2)CO修飾面とエチレンの相互作用
5.3)その他の炭化水素と修飾面の相互作用
2.6 Pd(110)(1×2)-Cs表面と炭化水素との相互作用
1)実験結果と考察
1.1)Pd(110)の清浄表面と(1×2)-Cs修飾表面
1.2)Pd(110)の清浄表面および(1×2)-Cs表面とエチレンとの相互作用
1.3)Pd(110)の清浄表面および(1×2)-Cs表面とベンゼンとの相互作用
1.4)Pd(110)の清浄表面および(1×2)-Cs表面とアセチレンとの相互作用
1.5)Pd(110)(1×2)-H表面とエチレンとの相互作用
2.7 バイメタル表面の構造と反応性
1)真空蒸着によるバイメタル表面の構造
1.1)オーバーレーヤー
1.2)相互拡散によってできる表面合金、薄膜合金
2)バルク合金の表面構造
3)バイメタル表面上における単純な気体の吸着状態
3.1)CO
3.2)H2
3.3)O2
2.8 表面反応をみる -時間分解電子エネルギー損失(表面振動)分光による-
1)電子エネルギー損失分光とは?
2)実験方法
3)TREELSの応用分野
4)TREELSの応用例
4.1)TREELSスペクトルの具体例
4.2)Cu(100)面におけるCOの吸着、脱離の速度論的研究
4.3)Ni(110)面におけるCH3OHの分解反応
4.4)Ni(110)面におけるCO吸着構造の変化
2.9 金属表面上における動的過程 -走査トンネル顕微鏡による観察-
1)STMの理論
1.2)Tersoff-Hamannの理論
1.2)詳細な理論
2)トンネリング分光
3)チップー清浄表面相互作用
4)化学選択性
5)金属清浄表面
5.1)表面電子状態
5.2)二次元電子ガスの定在波
5.3)ステップ動力学
6)原子・分子分解表面化学反応
6.1)吸着粒子誘起再構成
6.2)気体分子の分子状化学吸着の機構
6.3)気体分子の解離吸着の機構
6.4)単純な二分子反応の機構
6.5)チップー吸着分子間相互作用
2.10 吸着粒子一個の振動スペクトルを調べる -非弾性トンネリング分光-
1)非弾性トンネリングの機構
1.1)双極子散乱
1.2)共鳴散乱
1.3)衝突散乱
2)STM-IETSによって得られる情報
2.1)振動励起
2.2)振動モードの選択則
2.3)振動励起による解離(原子移動)
2.4)回転励起
2.5)振動励起と回転励起のカップリング
2.11 気体と固体表面との界面における化学動力学
1)相互作用の素過程
1.1)気体分子と表面との衝突による並進エネルギーの移行過程
1.2)表面における気体分子の捕獲
1.3)表面における気体分子の拡散と脱離
2)単純な反応の例
2.1)H2の解離吸着とその逆反応
2.2)引き抜き反応
2.12 不均一系触媒反応の微視的機構
1)COの酸化反応の機構
2)NH3の合成反応の機構
3)炭化水素の水素反応
3.半導体(シリコン)表面における表面反応の微視的機構
3.1 シリコン表面の電子分光学的性質
1)清浄表面の作成
1.1)清浄表面の作成方法
1.2)オージュ・スペクトル
2)清浄表面の原子構造
2.1) 開面とアニール面
2.2)(2×1)構造から(7×7)構造への構造変化
3)清浄表面の電子的性質
3.1)仕事関数、表面電位、電子親和力
3.2)表面準位
4)清浄表面の表面プラズモンと表面フォノン
4.1)表面プラズモン
4.2)表面フォノン
5)酸素吸着
5.1)吸着確率、表面被覆度、吸着のカイネテックス
5.2)吸着構造
5.3)電子的性質
6)酸化膜
6.1 電子的性質
3.2 シリコン表面における化学反応素過程
1)総論
2)各論
2.1)H原子
2.2)O2
2.3)NH3とN原子
2.4)C2H2
3)最近の動向・将来の展望
3.1)Si(111)(1×1)-H表面の振動のダイナミックス
3.2)Si(111)(1×1)表面におけるH原子の表面拡散
3.3)Si(100)からのH2の熱脱離のカイネティクス
3.4)Si表面における光・電子誘起反応
3.5)アルカリ金属修飾したSi表面における反応
3.3 シリコン修飾表面と気体分子との相互作用
1)Si(100)-K、HおよびSi(111)-B表面と気体分子との相互作用
1.1)Si(100)-K表面と酸素分子との相互作用
1.2)Si(100)-K表面と酸素以外の二原子分子との相互作用
1.3)Si(100)(2×1)-K表面と水素原子との相互作用
1.4)Si(100)(2×1)-K表面と水素原子を含む気体分子との相互作用
1.5)Si(100)-H表面と気体分子との相互作用
1.6)Si(111)-B表面とアンモニアとの相互作用
1.7)Si(111)-B表面とアンモニア以外の気体分子との相互作用
2)Si(100)(2×1)-H表面とカリウム原子との相互作用
2.1)熱励起電子がつくる表面プラズモンの多重励起 -新しい二次元電子系
2.2)K吸着によるSi(100)(2×1)-H表面からの水素分子の脱離 -新しい化学反応機構
3.4 シリコン単結晶表面上の動的過程 -走査トンネル顕微鏡による-
1)気体分子の表面拡散
1.2)Si(100)表面上の水素原子
1.2)Si(100)表面上の水素原子対
1.3)Si(111)7×7表面上の酸素分子
2)金属原子の表面拡散
2.1)Si(111)7×7表面上の鉛
3)吸着Siモノマーの表面拡散、吸着Siダイマーの表面拡散と回転
3.1)Si(100)2×1表面上の吸着Siモノマーの拡散
3.2)Si(100)表面上の吸着Siダイマーの拡散
4)核形成と結晶成長(ホモエピタキシー)
4.1)Si(111)7×7表面上のSi
4.2)Si(100)2×1表面上のSi