内容説明
植民地以後における理性が生み出す、現代世界の歪みとはなにか。哲学、文学、歴史、文化における支配的なるものを検証しながら、従来のフェミニズム‐ポストコロニアル研究を乗り越えつつ、従属的立場におかれた者たちの抵抗の可能性を脱構築的に編み直す理論的実践の書。
目次
第1章 哲学
第2章 文学
第3章 歴史
第4章 文化
付録 脱構築の仕事へのとりかかり方
著者等紹介
スピヴァク,ガーヤットリー・チャクラヴォルティ[スピヴァク,ガーヤットリーチャクラヴォルティ][Spivak,Gayatri Chakravorty]
1942年西ベンガル州カルカッタ生まれ。コロンビア大学アヴァロン財団人文学教授。カルカッタ大学卒業後、大学院から渡米し、定住。コーネル大学でポール・ド・マンに学び、W・B・イェイツの生涯と思索を研究した博士論文“Myself Must I Remake”(1974,Crowell)を提出。アイオワ大学、テキサス大学オースティン校、ピッツバーグ大学などで教鞭を執る。ジャック・デリダの『グラマトロジーについて』を英訳し(1976年)、その卓越した長編序文が注目を浴びた
上村忠男[ウエムラタダオ]
1941年生まれ。東京外国語大学大学院地域文化研究科教授。学問論、思想史研究
本橋哲也[モトハシテツヤ]
1955年生まれ。東京都立大学人文学部所属
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感想・レビュー
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みみみんみみすてぃ
11
★★★★★ ものすごい構成。スピヴァクの10〜20年の集大成でもあるらしい。「第1章哲学」では、カント、ヘーゲル、マルクスといった古典哲学のフェミニズム的/ポストコロニアル的脱構築をほどこす。また第2章の文学篇では、特に未読のブロンデ『ジェイン・エア』の批評が印象的だった。 第3章までしか読んでいないが、全て読み終えたあとまたコメントを残したい。2016/05/06
Bevel
3
どんなこと言ってるのかなって思って読んでみた。デリダ使いの文芸批評家としては岡真理の方が好きかも。ただカントのアレゴリーを断定する読みのところはすごいと思った。2009/12/27
星野聖栞(ほしのせしる)
2
「ポストコロニアル理性批判」上村忠男著 G.Cスピヴァクは、サヴァルタン的女性の沈黙について、共犯関係にあることを承認することが重要と述べている。 女性であっても、加害者になり得る事実を認める必要性があり、従属的な状況に置かれた女性たちのそうした沈黙の原因を作ってきたのは男性だけとは限らない。 また、DVの痕跡が男たちによって隠蔽され、抵抗の末に命を絶った女性たちの真意を知る術は残されていないのだ。2014/08/23
madofrapunzel
1
★★★★★ 初めてのスピヴァク。なんか視点が面白い! カント、ヘーゲル、マルクスの壮大な書物のわずかな箇所から、徹底した解釈を引き出す!という感じ。笑 新鮮で面白かったです。2013/05/03
Rei Kagitani
0
とても長大で重厚だが、示唆に富んだ大胆なアプローチで、もう一度精読したい。特に植民地支配をめぐる問題は現代日本で忘却されている部分と言わざるを得ず、スピヴァクによる「不可能なものの経験」「(不)可能な視点」という概念はよく考察していきたい2017/09/22