内容説明
知られざる幕末正史。戊辰戦争が終結、新政府の行なった論功行賞で、肥前大村藩が、薩摩、長州、土佐に次ぎ、三万石の賞典禄を賜った有力勤王藩だったことはあまり知られていない。大村藩士・渡邊昇は若き日、江戸練兵館で剣術修行をして頭角をあらわし、桂小五郎の次の塾頭となる。大村は、時代の大転換期の様相をいち早く呈していた長崎に近い。昇が帰藩したのち藩主主導で藩論が尊王に統一された。昇は江戸での人脈を活かして交渉に奔走し福岡藩が頓挫した薩長間の調整にも尽力する。彼自身の危機は、剣術の腕と人間力とともに、練兵館時代を中心に得た知己がしばしば救い、明治以降は国の要職を歴任した。そんな渡邊昇が残した自伝には、彼自身や大村藩の動向とともに、彼の触れた事件や国内の情勢、幕末主要人物たちの姿が臨場感をもって描かれている。本書は自伝とその他の史料や取材をもとに描かれた渡邊昇の評伝であると同時に、日本の激動の時代の記録である。
目次
近代日本の夜明け
渡邊昇
尊王攘夷
薩長同盟の道筋
福岡藩転覆
長薩和解
「一縄の策」機運熟す
大村藩 兵を京へ
王政復古の大号令
江戸城無血開城談判
大村藩の動きと秋田救援の派兵
会津攻め 若松城の攻防
著者等紹介
稲富裕和[イナトミヒロカズ]
1953年長崎県生まれ。1980年大村市教育委員会 遺跡調査と文化財保護に従事。日本考古学協会会員、長崎県考古学会顧問、新長崎学研究会代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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