内容説明
船をください。ある「ひとりの男」が、「王様」に願い出ます。その船で、まだ知らない島を探しにいきたい、と男は言います。知られていない島など存在しない、とまわりがバカにしても男の信念は揺るぎません。不条理きわまりない官僚的な手続きを手順よく切りぬけ、男はついに船を手に入れます。その姿に心を動かされた「掃除女」は、男に着いていくことを決心します。強く決断したときだけ開かれる「決断の扉」を通って―。98年ノーベル文学賞作家が描く、究極の生きる秘訣。
著者等紹介
サラマーゴ,ジョゼ[サラマーゴ,ジョゼ][Saramago,Jos´e]
1922年、ポルトガル、リスボン北東部のアジニャガ生まれ。高等中学校を中退ののち、溶接工、公務員等さまざまな職業を経てジャーナリストとなる。1998年に作家としてノーベル文学賞を受賞
黒木三世[クロキミツヨ]
大阪府出身。関西学院大学英文科卒。翻訳プロダクションを運営するとともに翻訳出版の企画および翻訳に携わる
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
83
王様の住む城に一人の男が「一艘の船をください」と願い出る。掃除女の計らいで王に謁見することができた男は、船で何をしたいのかと問われて、「知らない島を探しにいきたい」と答える。船を得たものの船乗りからは「地図にない島はない、知らない島はもうない」と拒否されてしまう。唯一の連れは、船の掃除だけしかしたくないという掃除女。「好意は最高の所有の形、所有は最低の行為の形」「自分から離れてみないと、自分のことは発見できない」「島を見たいのなら、その島を離れなければならない」と見知らぬ島を探す男女の航海が始まる。→2022/10/21
かもめ通信
24
「自分から離れてみないと、自分のことは発見できないものなんだ」難しい言い回しはなく、とても短いお話なのだけれど、ちょっと不思議なお話でもある。読んでいるとまるで文字と文字、言葉と言葉、行と行、ページとページの間になにかが隠れているような気がして、思わず目をこらしてしまう。ところどころ声に出して読んでみたくなる。そして読み返すたびに、本当に「なにか」が見つかる。サラマーゴらしい1冊。2016/01/04
hiroizm
19
地図にない島を探しに行こうとする男が主人公の、読書時間20分程度の超短編。島探しにに取り憑かれた男、地図にない島は無いとする王様、主人公と行動を共に行動する掃除女、登場人物はどこかそれぞれ歪ながら不思議な味がある。「自分を知るためには、自分から自由にならなければならない」など、含蓄のある言葉もあり、いろいろ深読み可能な寓話という感じ。このご時世だからか心の清涼剤的な効果あり。絵本にしても良いかもですね。2020/04/27
鏡也
14
ー見知らぬ島を見つける為に船をくださいー物語は王様にお願いするところから始まる。見知らぬ島って一体なんなんだろう?読む人によって印象や受け取るメッセージは違うと思いますが、個人的には読んでよかったなと思える本でした。行き詰まった時、息抜きにちょうどいい本です。読むと新しい何かが見えてくる・・・かもしれません。2016/09/22
夜間飛行
14
夢を追って壁に突き当たった男は、女の美しさしか見えなくなってしまう。一方女は男が「見知らぬ島」しか見てないと思う。二人の心はちぐはぐで互いを見失っている。男は夢の中で航海に出て、そこでは人や動物がみな「知られた島」へと去って行くのを、一人しょんぼりと見ることになる。しかし「無力に取り残されること」こそ見知らぬ島への真の扉なのではなかろうか。夢の中でこぼれた種がやがて芽吹き、樹木が根を張った船で航海を続ける。目覚めたのち男は女と愛で結ばれる。こぼれた種や残されたものに大きな価値があることを忘れないでおこう。2013/05/06
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