内容説明
新しい時代の経済は、従来の少品種、大量生産、低利益型工業とは、明らかに異質の方向に向かいはじめた。中心となるのは、多品種、限定生産、高付加価値型産業である。そこで競業を支配するのは、コンピュータ・ソフトを中核とする「知」(インテリジェンス)である。特に、ビジネス・メソッドの特許化は、新種の経済取引方法を次々に生み出した。この動きは、世界経済をさらに活性化するものと予測される。現に、90年代における米国経済成長の長期化は、次々に生み出される新たなビジネス・メソッドによる効果といっても過言ではあるまい。米国企業間におけるビジネス・メソッドをめぐる特許競争は、1990年代初頭に始まった。日本企業がこの動きに関心を持ち始めたのはごく最近のことである。ずばり、10年立ち遅れた。この現実から、目をそむけていては問題は解消しない。その立ち遅れは、日本企業にとって致命的であろう。本書は、日本企業が抱えた上記の課題の正面から取り組んだ本格的な企画である。その内容は、Eコマース等ビジネス・メソッドをめぐる最新の特許問題を始め、知の時代に対応するための実務的な示唆に溢れた数々の論文を収録している。
目次
第1部 特許出願戦略(継続出願手続における戦略的な対応策―米国特許庁にとって簡易化された手続きだが…;米国意匠特許の実務―意匠特許の保護範囲をできるだけ広くするための出願戦略 ほか)
第2部 インターネット技術および電子商取引関連問題(特許法の保護下に入るインターネット上の「電子商取引」―インターネットや電子商取引上の特許訴訟が増える可能性も…;インターネットの使用に対する人的管轄権の行使―予期しない法域でも訴訟の当事者となりうるインターネットの利用者 ほか)
第3部 知的財産権訴訟戦略(破産事件に際して知的財産権を保護するための手続―ライセンサーの破産からライセンシーの利益を保護する破産法第365(n)条
共同発明者の適格要件と技術移転契約に関する考慮事項―共同研究の結果起こりうる特許侵害訴訟を回避するために ほか)
第4部 連邦巡回控訴裁判所判例傾向(ビジネス方法を特許保護の対象としたCAFCの判決―ステート・ストリート事件にみるソフトウェア特許化への動き;CAFC(連邦巡回控訴裁判所)最新判決ウォッチング ほか)