エヌピー新書 タックス・オブザーバー―当局は税法を理解しているのか

志賀 櫻【著】

エヌピー通信社（2015/09発売）

• サイズ 新書判／ページ数 283p／高さ 18cm
• 商品コード 9784900840539
• NDC分類 345.21
• Cコード C0233

内容説明

毎年の税制改正は、納税者の知らないところで、利権がらみで、密室で進められている。密室の中では、国民の間で格差が拡大しないようにとか、公平・公正な分配を行おうなどと考えている関係者はほとんど全くいない。壊滅的にいない。そこには、いかにパイのかけらを少しでも多くぶんどるかということしか考えていない輩だけが群がっているのだ。うんざりするような税の実態を暴き、明らかとなった税の諸論点に鋭く切り込む。

目次

第１章　国税通則法の改正と国税調査
第２章　租税争訟の実際
第３章　課税庁は税法を理解しているのか
第４章　タックス・ヘイブン
第５章　国際的租税回避とＢＥＰＳ
第６章　ピケティの『２１世紀の資本』を読む
第７章　成長政策批判
第８章　民間税制調査会
第９章　日本国が直面する「税」の諸論点

著者等紹介

志賀櫻［シガサクラ］
１９４９年東京生まれ。７０年司法試験合格。７１年東京大学法学部卒業、大蔵省入省、７６年熊本国税局宮崎税務署長、９１年大蔵省主税局国際租税課長・ＯＥＣＤ租税委員会日本国代表・主計局主計官を経て警察庁へ出向し９３年岐阜県警察本部長。９８年金融監督庁国際担当参事官・ＦＳＦ日本国代表、バーゼル銀行監督委員会、ＩＯＳＣＯ、ＩＡＩＳ、ＦＡＴＦの日本国代表。２０００年東京税関長、０２年財務省退官、０７年国際租税学会（ＩＦＡ）日本代表、１０～１２年政府税制調査会納税環境整備小委員会特別委員、１５年民間税制調査会の設立に参画（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[Masaki Sato]

序盤にある、税務署は課税要件や法的三段論法も知らず税務大学校はただ単に課税テクニックを教えるだけ、通則法は行政手続法の脱法行為を平気で行う仕組みというのはなかなか刺激的だ。

2021/08/16

[かった]

志賀桜氏が税理士新聞にコラムという形で寄せたものを信書に再編集。なので話題は結構とびとびになっている。中心は、サブタイトルにもあるように税務当局は税「法」を理解せずに税徴収実務を執行しているという驚きの事実である。筆者の指摘によればその原因は、教育システムの不在、特に税務大学校の欠陥によるところが大きいようだ。 租税法律主義は民主主義の根幹なのに、法を知らない執行官によって秩序が維持されている社会は怖すぎる。

2019/04/26

[Hisako Mi]

租税関連の本というのは法律、経済、会計と多くの関連分野を持つものなので、なかなかまとまらず、ともすれば、広く浅くになってしまいがちである。本書は広く浅くになってしまっているものの、入門書の記載もあり、関連分野への興味の幅を広げつつ、本書を読み進めることもできる。税務署の姿勢等は本書とは異なる点も多々ある。

2016/09/05

[ざきおか]

志賀櫻氏の三冊目の新書であり、過去二冊を読了しているので本書も手に取った。内容は過去二冊と比べても段違いに難しいと言える(作者の言い回しにも因るが)。税務行政、国際税務、経済学を基調とする税制議論と言及は多岐に及ぶ為、会計学・経済学・租税法学の基礎知識があるのが前提といえる難度である。しかしその分今の税務・税制についての諸問題の把握にはうってつけの本であろう。新しい見地を提供してくれたのは間違いない。ただ、この本の出自を鑑みて仕方ない点ではあるが、あまりに論点が多岐に及ぶので読み辛いというのは否めない。

2015/10/12

[whistle-blower]

「迷ったら課税しろ。あとはサポートする」と税務職員に訓示する国税庁長官。そしてきちんとした「税法を教わっていない」税務職員。税務署の職員たちを専門で教育する税務大学校というところでは、「課税テクニック」ばかりを教えているという事実・・・。うんざりするような「税」の実態を暴いた良書。「納税者の誰もが諦めてしまっている税の不合理さ」については、「羊のようにおとなしい納税者が声を上げる」ことをしないままでは、この国の「惨憺たる現状は変わらない」と警鐘を鳴らす。元財務省キャリア官僚（現弁護士）が書いた渾身の一冊。

2015/09/04