内容説明
存命中も熱心なファンはいたものの、華やかな評価のなかったロベール・クートラスの作品が、没後四半世紀たち、彼の暮らしたパリから遠く離れた日本で、熱狂的な盛り上がりを起こしています。今まで詳しく知られることのなかった、彼の生涯を、彼が最晩年、同居し、遺言にしたがい、作品を管理をする女性がはじめて綴りました。パリの町並みのなかに、アルザスに、ブルターニュのカテドラルに、クートラスが、今、蘇ります。
目次
僕がアーティストだって?
嫌いだった“もっと早く”―工場と石工
リヨンの美術学校
ボヘミア生活の終わり―R画廊の頃
パリ、転々
カルトと空腹の時代―V画廊との契約
クートラスの恋
デッサン1
奇妙な生活
孤独の黒い太陽〔ほか〕
著者等紹介
岸真理子・モリア[キシマリコモリア]
1977年に日本の画廊のパリ支店で働くため渡仏。クートラスと出会い晩年をともに過ごす。クートラスが遺言で指定した“包括受遺者”。本人が売ることも散逸させることも許さず、“Reserve de parton(親方の獲り方)”と呼んだリザーブ・カルトを含め、作品を保管している。現在パリ郊外在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐっちー
20
町の様子や部屋の中の色彩などが思い浮かぶ、画家の生活の断片たち。生没年を二度見してしまった。まだそんなに大昔というほど昔の話じゃないだろうに、今はすっかり生活は変わってしまったから。1人のアーティストの物語でもちろんクートラスの作品そのものも気になるが、彼の生き方やそのバックボーンがとても興味深かった。2015/01/10
りつこ
16
才能に恵まれることと生きやすさとは反比例するのかもしれない。優しくてユーモアがあって女性にもてて友人に恵まれながらも、圧倒的な孤独感がクートラスにはあって、だからこそ作品がこんなにも素晴らしいのだろうし、だからこそ長生きはできなかったんだろうなぁ、と思う。収められたカルト、絵、デッサンがほんとうに素晴らしくて、展覧会があったら是非行ってみたいと思った。それにしてもクートラスが作者である真理子に投げた一言のなんと残酷なことよ…。2012/07/11
チェアー
13
さみしがりやで、自暴自棄で。いつ死んでもいいと思っているのに、死ぬことは怖くて。自分の作品は自分以上に自分だから手放したくなくて。 自分の作品を分かる人はこの世にいないと思っていても、理解されたくて。 わかるとは言わない。言えない。しかし、ここにいてほしかった。 2019/06/04
miho
13
クレマチスの丘でクートラスの絵をみて、とても心惹かれるものがあった。ユーモラスのなかに、なんともいえない物悲しさがある。そのあまり幸せではなかった生い立ちのせいもあるのか、才能に溢れ、人を惹きつける魅力も持っているのに、不器用で孤独だったクートラス。絵を描くことは彼の全てだった。2016/09/08
べりょうすか
12
ボヘミアンみたいに暮らし、心底愛したひとからは愛されなくて、孤独に死んだクートラス。だからこそこんなに美しい絵が描けたんだろうか。紙がなかったら切符の裏にでも描くと言った彼は芯から絵描きだったんだなぁ。なんだか私も掻き立てられた。2014/06/07
-
- 和書
- 図解でわかる流通業界地図