出版社内容情報
☆序文☆
放送を含めた無線通信の世界は大きく変化しつつある。最近の携帯電話やPHSの爆発的な普及, 低高度軌道周回衛星を用いた移動通信の実用化, 屋内無線LANの導入, またディジタル衛星放送さらにはディジタル地上放送など, 従来主として用いられていた中継系から, 我々の身近なアクセス系へと無線通信の主力が移ってきている。
電波伝搬は, 無線通信の実用化開始以来, システム設計に必須の技術として多くの研究がなされてきた。しかしながら, 我々の目に見えない電波が, どのようなメカニズムで空間を伝わり, その信頼性はどのような自然現象の影響により損なわれるのか, その変動はどのように予測することができるかなどが研究対象のため, 電波伝搬はどちらかといえばわかりづらく, 限られた専門家の関心の対象であった感がある。
前述のように無線通信が我々にとってますます身近になったこの機会に, すべての無線通信に関する電波伝搬についての情報をまとめ, アマチュア無線家まで含めた多くの方にわかりやすい形でその成果を利用して頂けるよう本書の出版を企画した。本書は基礎編と応用編の2部構成となっている。応用編においては, 現在の無線通信の各分野について, 実際にその無線通信システムの実用化を進めている第一線の研究者に, それぞれの章で完結するような形で最近の研究成果を執筆頂いた。また, それらの基になる部分については, 基礎編としてとりまとめてある。これらの電波伝搬に関する理解が深まれば, 無線システムの面白さや問題点がわかり, さらには新しい無線システムの発想も生まれて来よう。
本書の編集にあたっては, 上記のように応用編を重視し, できるだけ各無線業務に関して章毎に自己完結的になるよう心がけ, 基礎編の多くの章はこれらを結びつける情報を簡潔に述べるようにしている。したがって, 若干記述が重複している項目もあることをご容赦頂きたい。また, 最近のパソコンの普及も考慮し, すぐに計算できるよう必要な計算式もできるだけ記載したつもりである。
ハンドブックという本書の性格上, 多くの出版物の図表を利用させて頂く必要があった。原典は当該図表のタイトルおよび参考文献に記載しており, これらの版権を所有しておられる出版社あるいは著者の方々より事前にお許しを得て転載させて頂いている。また, ITU-R関係については, 以下から全ての情報が入手できる。
International Telecommunication Union, Sales and Marketing Service, Place des Nations, CH-1211, Geneva 20, Switzerland
Tel. +41-22-730-6141, Fax. +41-22-730-5194, E-mail: Sales@itu.int
本書を編集するにあたり痛感したのは, この分野における我が国の諸先輩の研究の先見性の鋭さと優秀さである。多くの研究が世界に先駆けて, また無線システム設計にすぐに適用できる形で進められてきている。我が国の無線通信の今日あるのは, これら先人の成果にも支えられていると言えよう。あらためて感謝の意を表したい。
これまで, 個別の無線業務の電波伝搬をとりまとめた著書は多数あるが, すべての無線業務にわたって電波伝搬をとりまとめたものは, 筆者の知る限りにおいては, 世界的に見てもほとんどなかった感がある。無線通信業務のほぼすべてにわたって, それぞれの分野の第一線で活躍されておられる方々に最新の情報をまとめて頂いた本書を, 無線通信に関わる多くの方々に「座右の書」として頂ければ幸いである。
最後に, 本書作成の機会を作って頂いた東海大学進士昌明先生, ご協力頂いた関係機関の皆様, ご多忙中に多くの週末を費やし本書をご執筆頂いた方々, それをご支援頂いた執筆者のご家族の皆様, ならびにリアライズ社相澤孝美氏に心よりお礼申し上げます。
平成11年1月
北見にて 編集委員長 細矢良雄
監修
細矢良雄 北見工業大学
執筆者
細矢良雄 北見工業大学
長野勇 金沢大学
山口芳雄 新潟大学
小川英一 摂南大学
唐沢好男 KDD研究所
河崎善一郎 大阪大学
伊藤泰宏 日本放送協会
藤井輝也 NTT移動通信網
佐藤明雄 日本電信電話
井原俊夫 郵政省通信総合研究所
伊藤泰宏 日本放送協会
唐沢好男 KDD研究所
小川英一 摂南大学
井原俊夫 郵政省通信総合研究所
明山哲 NTTアドバンステクノロジ
塩川孝泰 東北大学
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☆目次
第1章 序論