感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
7
錬金術がテーマの最初の書である本書で著者は、錬金術師ゾシモスがその作業中に見た夢を、錬金術過程の一部と見なし、物質を変成させる錬金術は同時に心も変成させるという主張に注目する。夢を語り、夢から覚めた自身に問い、さらに夢に対して自問自答しつつそのビジョンを変成させていくゾシモスは、変成自身の原理と力を、金属から新たな金属を生む「男性的原理と女性的原理の結合」の力と同じであるとした。著者はこの見方に、自己の外にキリストを対象化するキリスト教への批判を読み、内なるキリストという自らの心理主義的主張を確固とする。2021/06/24