内容説明
カリブ海のジャマイカは、17世紀にイギリスによって植民地化され、黒人奴隷制に基づく砂糖プランテーション生産が拡大された。黒人奴隷たちはアフリカ伝統の宗教や慣習を維持したが、18世紀末に米国から黒人パプティスト教会が到来し、両者が混合して「アフリカ帰還」志向とブラック・ナショナリズムに基づく精神傾向が強まった。19世紀末にジャマイカに生まれたマーカス・ガーヴェイ(1887~1940)は、このような環境下で思想形成し、1914年に世界黒人地位改善協会(UNIA)を設立した。1916年には渡米してUNIAの運動を米国、カリブ地域、アフリカの環大西洋地域に拡大し、数百万人規模の黒人史上最大の反植民地主義的な黒人解放運動に発展させた。ガーヴェイの影響は1930年代に低下したが、その思想はジャマイカでラスタファリズムやレゲエ音楽に結実しただけでなく、米国、カリブ地域、アフリカ諸国においてパンアフリカニズム的運動に影響を残し、21世紀にも奴隷制賠償請求運動を支持する諸組織に強い影響力を持ち続けている。本書はガーヴェイの反「植民地主義」思想の影響の全容解明を試みる。
目次
1 ジャマイカの社会状況
2 パンアフリカニズムとエチオピアニズム
3 アフリカ帰還運動
4 マーカス・ガーヴェイの思想形成
5 米国における黒人解放運動の開始
6 UNIAの勢力拡大
7 ラスタファリズムとレゲエ・ミュージック
8 マーカス・ガーヴェイの思想的影響
9 終章
著者等紹介
小倉英敬[オグラヒデタカ]
1982年、青山学院大学大学院博士課程中退。1986年、外務省入省。中南米局、在キューバ大使館、在ペルー大使館、在メキシコ大使館勤務を経て、1998年末退官。現在、神奈川大学外国語学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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