内容説明
「旅の鉄人」宮本常一が歩いて感じた日本の原風景。貴重な紀行文、調査記録を収載。
目次
旅する人びと
素朴な人びと
島の人びと
たくましき女たち
僻地に生きる
農民のくらし
海民のくらし
心にとまった人びと
庶民の世界
著者等紹介
宮本常一[ミヤモトツネイチ]
1907年、山口県周防大島生まれ。大阪府立天王寺師範学校専攻科地理学専攻卒業。民俗学者。日本観光文化研究所所長、武蔵野美術大学教授、日本常民文化研究所理事などを務める。1981年没。同年勲三等瑞宝章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きいち
34
そこここに書かれた、とても率直な宮本の想いと出会うのがうれしい。それは猿回しの復活に夢見た輪になっての物見と対話であったり、峠で座り込み何かしら絵を描いてまた立ち上がって峠を降りていく中学生への共感のあふれかたであったり、どうしようもなく袋小路へはまっていく人への心のひかれかたであったり、と、場面も人物もばらばらなのだけど、とにかく宮本のひとりの人に対する関心の深さに感じ入ってしまうのだ。◇冒頭、食い詰めて交換に来た漁師にへの、自分とこも苦しいのにお互い様と山盛のイモを渡してしまう宮本母のはなし。温かい。2018/02/12
ワッピー
30
昭和20~50年代に雑誌に寄稿された見聞記集。冒頭の「旅漁夫」にはやられました。ある日、食料をもらいにきたことが縁で、互いに名前も知ないまま、長年定期的に会っていた漁夫がある日見せに来たものは?長年の調査旅行の中で蓄積した様々な職業の人々の暮らしを読むと、今の生活リズムやメンタリティはまったく変わってしまったようでいて、それでも先達から受け継いでいる部分もしっかり残っているように感じます。70年ほど前の「離島」「僻地」「農村」「漁村」「鉱山」の生活を生き生きと伝えてくれるすばらしい選稿でした。おススメ!2020/10/17
あおでん@やさどく管理人
22
宮本常一さん自身が山口県周防大島生まれということもあり、島の話に心惹かれるものが多い。特に「海ゆかば」で描かれた、自分の小さな船で瀬戸内海から日本海、さらには朝鮮まで行ったという老人の話に驚いた。豊かではなかったかもしれないが、いつの時代も懸命にたくましく生きているのが「庶民」たち。その暮らしが生き生きと伝わってくるのは、作者の話の引き出し方と、その筆致の賜物。2023/01/24
カネコ
4
◎2015/10/12
セシリア
3
宮本常一の視点に魅かれる。この人は本当に人間が好きなんだなあと、つくづく感じる。この本の中にも、「私の見たいのは名所古墳や風景のすぐれているところでもない。田や畑や雑木林や住居や道や、人びとの生活しているさまである。その土地に人はどんなにして住みつき、どんなに生きてきたかを見たい」とあった。温かい目をもつ民俗学者だ。2018/02/01