内容説明
ベストセラー『利己的な遺伝子』をはじめ科学啓蒙書の良書を長年翻訳してきた著者が、あまたの憂うべき誤訳・迷訳の中から、49の重要翻訳語に注目。誤りの原因を丹念に調べ、現状の混乱ぶりを描き出す一方、翻訳の現場から生まれた秀逸な新訳語を提案する。
目次
1章 イヌも歩けば誤訳にあたる
2章 草木もなびく誤りへの道
3章 人と自然を取り巻く闇
4章 こんな訳語に誰がした
5章 進化論をめぐる思い違い
6章 心理学用語の憂鬱
7章 生物学用語の正しい使い方
8章 悩ましきカタカナ語
著者等紹介
垂水雄二[タルミユウジ]
1942年、大阪生まれ。翻訳家。京都大学大学院理学研究科博士課程修了。出版社勤務を経て、1999年よりフリージャーナリスト(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Ted
7
翻訳者だけあって言葉の使い方が正確で信頼が置ける本だが、思ったよりも翻訳語の事例が少なかったので、もう少し挙げてほしかった。「キューティクル」など、日本語に置き換えた場合の訳語がすぐに出てこないような外来語は不用意に使わないに限る。やたらと横文字を使う人間は自分でもよく分かっていないのだ。印象に残ったのは、「ロボット」と「アンドロイド」と「サイボーグ」の違い。ニュアンスや語感の違いを理解している人とそうでない人とでは、些細な所でも言葉選びに差が出てくるものだ。言葉に対して厳密な人かどうかの見極めにもなる。2011/07/31
kenitirokikuti
6
図書館にて▲ギニーピッグは和名モルモット。pigだが豚ではない。ややこしい…▲locust いなご。ヘボンは「蝗」(バッタ)と正しく訳したのだが、日本では大発生するのはバッタでなくウンカやイナゴなので、日本では「蝗」は後者を指していた。ややこしい…▲谷間のユリ。鈴蘭である▲公害は公的生活妨害の省略だが、公害の元語はポリューションである。農薬も元語は虫殺しである▲ニューロンのfire。発火は誤訳だろう▲免疫immunity。元は義務免除という法律語▲キューティクル。クチクラと同じ語。そうだったのか…2020/09/08
Танечка (たーにゃ)
2
翻訳する際に誤訳しがちなことばや、どうしてそんな訳語になったのか、という言葉に関するエッセイのようなもの。形容詞+名詞で 1 つの用語となっているものは要注意という指摘は肝に銘じます。2014/08/03
timeturner
1
専門的すぎて飛ばし読みしてしまった箇所もあるが、話の種になりそうな薀蓄が多くて楽しい。一般書翻訳の参考にはあまりならなそうだが。2011/09/23
なかがわみやこ
1
日本語らしくするには必ずしも辞書の最初の言葉を選ぶことはないけれど、どれを選ぶか、には慎重であらねばならない。自戒。2010/12/31