内容説明
記紀万葉の時代から今日に至るまで、日本人と藤との長い付き合いの歴史を繙き、独自の視点で考察する。蛇に見立てられた藤の伝説、藤原氏に代表される藤の家紋、伝統ある名所・名木、藤の美術、食利用や繊維利用ほか、興味が尽きない話題が満載。植物文化史の第一人者による、ありそうでなかった「藤の文化誌」。
目次
第1章 藤豆ははじけ飛ぶ―フジの植物誌
第2章 垂姫に藤の花咲く―万葉の藤
第3章 結婚を拒む女神の心を開いた藤の花衣―『古事記』の藤
第4章 松の梢に咲く藤―藤花の絵の始まり
第5章 平安貴族と藤
第6章 藤の名木と名所
第7章 正岡子規と亀戸天神の藤
著者等紹介
有岡利幸[アリオカトシユキ]
1937年、岡山県生まれ。1956~93年まで、大阪営林局にて、国有林における森林の育成・経営計画業務などに従事。1993~2003年3月まで近畿大学総務部に勤務。2003年4月~2009年まで(財)水利科学研究所客員研究員。1993年第38回林業技術賞受賞。著書に『松と日本人』1993(人文書院、第47回毎日出版文化賞受賞)ほか多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ようはん
17
日本における藤の文化と歴史について結構詳しい。藤の花が咲いた頃を種蒔きの時期とする地域や和歌の題材になる等、古くから日本人に親しまれており公家文化では奈良時代には藤狩と称して近隣の山で鑑賞していたが、平安時代以降は邸宅で栽培して鑑賞するようになる。特に蔓で松等の木に巻きつく姿は大蛇を想起してその伝説も残るが、権勢を誇っていた藤原氏になぞらえられたのが印象深い。2023/01/20
多津子
8
古木も多く、古事記にも登場する藤は、桜のように意識することはないが、身近な場所に存在する。つる性樹木という特徴から中国では忌避されてたが、日本で親しまれたのは藤原氏の繁栄が影響しているともいう。その幹の様子から蛇に見立てられ、和歌や祭りや衣服などにも関わり、これほど深く根付いていることに改めて驚く。鬼滅の刃における藤の考察は、花から離れていってしまい必要だったのか疑問。子供の頃は砂場に藤棚があるイメージだが、上品な紫色が揺れる花は美しい。また季節になったら色々な藤を見に行きたい。2022/06/11
Go Extreme
2
フジの植物誌: ノダフジとヤマフジ 変種と品種 垂姫に藤の花咲く−万葉の藤: 藤花とホトトギス 垂姫に藤の花 結婚を拒む女神の心を開いた藤の花衣−『古事記』の藤 松の梢に咲く藤−藤花の絵の始まり 平安貴族と藤: 古今和歌集の藤 平安貴族の教養 源氏物語の藤 伊勢物語の長藤 藤の名木と名所: 神木となった藤 野田村の藤 源義家と藤伝説 春日大社の藤 正岡子規と亀戸天神の藤 藤の民俗: 伝説 ことわざ 家紋 食べる 藤原京の地名・藤原: 藤原氏の誕生 どんな地か 藤花は鬼を封じるか: 鬼の嫌うもの 身構える藤2021/07/09
Mr.deep
1
意外と藤の花の生態を知らなかったなあと勉強になりました。今後は藤の花のモチーフを重層的に見れるようになるかなあ2021/05/09