内容説明
イタリアはドイツや日本と同様第2次世界大戦の敗戦国だった。1949年、復興に向かうイタリア南端から北上するジロ・ディ・イタリア。帯同する作家ブッツァーティのペンは爆撃で廃墟となった街、死者たちへの追悼、建て直されて行く人びとの倫理観、そして青春の時が潰えるのかバルタリ!いわゆるレース・レポートとは一味違う現実を圧倒するファンタジーを綴る。
目次
街道の「下僕」は夜、大西洋フェリーで夢を見る
二つの母音がナポリ湾を走る選手たちを追う
競争は素晴らしい
ガリバルディが通った道を一〇〇人の選手たちが全速力で走り出す
ファツィオはおっ母さんとの約束を守る
エトナ山を一回りする客席の声
少し変なお爺さんがカンピオーネたちの跡を追う
コッピもバルタリもエボリで止まらない
カンピオーネの部屋は入室禁止
一瞬だが、バルタリがやられたかと思われた〔ほか〕
著者等紹介
ブッツァーティ,ディーノ[ブッツァーティ,ディーノ] [Buzzati,Dino]
1906‐1972。20世紀イタリアを代表する作家。その作風からイタリアのカフカとも称される。コッリエーレ・デッラ・セーラ紙の記者を続けながら作家として多数の作品を発表した
安家達也[アンケタツヤ]
1956年生まれ。中央大学、青山学院大学非常勤講師。リルケ協会(Rilke‐Gesellschaft)会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NAO
55
コッリエーレ・デッラ・セーラ紙の記者兼作家だったブッツァーティの、1949年5月21日から6月12日にかけてイタリア全土を19ステージに分けて走るジロ・ディ・イタリア帯同記。自転車レースのルポルタージュというからには、レースの詳細、選手たちの言動などが記されていそうなものだが、書いているのはブッツァーティ、そんじょそこらの帯同記とは違う。特にブッツァーティらしさにあふれているのが、6日目「エトナ山を一回りする客席の声」と、14日目「トリエステは泣き、歓声を上げ、カンピオーネたちに花を浴びせる」。2023/07/10
timeturner
2
凄くよかった! 1949年、復興期のイタリア。徹底的に破壊された古都の遺跡を、2つに分割され統治される地域を、岩と氷と霧と雹の険しい山塊を、波打つ人間の廊下を、自転車にまたがった男たちが風のように走り抜ける。ロードレースを知らなくても読めるけど、近藤史恵さんの『サクリファイス』シリーズや、漫画やアニメの『弱虫ペダル』に親しんだことのある人なら2倍楽しめるはず。 2023/03/02
TTK
1
自転車でイタリアを一周するような奇妙で馬鹿げたことが、私たちには必要なのだろうか?もちろん必要なのだ。……彼らが野原や丘や森の間をどれほどペダルを踏み続けたか見るがよい。彼らは絶対にたどり着くことのない遠く離れた町へ向かう巡礼者だ。彼らは古代の画家の絵にあるように、血と肉で人生という理解しがたい冒険を体現しているのだ。p.1962023/03/19
takeakisky
0
至福。コッピが圧倒的な力を見せたジロ史上最も美しいステージ17を含む。この年はシチリアから、ひたすら北上するルート設定。ローマまではティレニア海沿いを、そこからアドリア海側に抜け、ドロミテを経て、アルプスへ。最後はモンツァサーキット。19ステージ、4,088Km。近年の21ステージ3,500Km前後に比べると1ステージの長いこと。サイクルロードレースはポエジーと好相性。テレビで見たあの景色もあの山も沿道の信じられないくらいたくさんの人々も鮮やかによみがえる。見たことのないカンピオニッシモも。素晴らしい本。2024/11/07
KKKK
0
本人絵本で見たかった気がする ブッツアーティが書いてるの知っている我々は面白いけど スポーツ記事としての当時の評価はいかほどに…2023/04/30