内容説明
検証派ミステリの雄ジョン・ロードが別名義で放つ変化球。読者の予想を裏切るアクロバチックな結末!密室の浴室で死んでいた青年の死を巡る謎。“犯罪研究家メリオン&アーノルド警部”シリーズ番外編。
著者等紹介
バートン,マイルズ[バートン,マイルズ] [Burton,Miles]
1884年生まれ。本名セシル・ジョン・チャールズ・ストリート。別名義にジョン・ロード、セシル・ウェイ。1924年、A.S.F.(1924)でミステリ作家としてデビュー。ディテクション・クラブの主要メンバーとしても活躍した。64年死去
圭初幸恵[ケイショサチエ]
北海道大学文学部文学科卒。インターカレッジ札幌で翻訳を学ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
123
書かれたのはなんと80年前のイギリスミステリ。昨年に刊行されたから、装丁の新しさと内容の時代に乖離がある。牧歌的な感じさえ漂うのだが、あとがきにあるこの作家の膨大な作品を見ると、タイトルにdeathやdeadの付いたものが多いのだ。ほとんどが未訳だから、原題がそのまま目に入る。そしてこの作品も原題は『death』からで、内容も実際にそこから始まる。スコットランドヤードの警部たちが出てきて…いかにもイギリスミステリ。そして、犯人には、あっ!と思わされた。解説者が言うところの、まさにいぶし銀的面白さ。2018/03/04
飛鳥栄司@がんサバイバー
23
ジョン・ロード別名義の1作。ハウダニットに終始していて、殺人の方法をあばく一貫性が面白かった。トリック自体は少々大味な感じを受けるが、トリックを導き出す伏線とその回収方法が、別名義ではあるがジョン・ロードの旨さを垣間見せる。中盤の盛り上がりの薄さが、物語の抑揚を消してしまっていて残念なのだが、真相解明の最終局面で読者が納得させられる読み応えがある秀作である。ジョン・ロードは日本での知名度が低いので、なかなか読者が作品に手が伸びないかもしれないが、馴染みが無いからと言って読まないのはもったいない限りである。2018/11/25
maja
19
叔父の農場を訪れていたヒザリング邸の跡継ぎバジルが浴室で不審死する謎めく密室もの。おおいに納得のいく殺人動機を持つ人物がいるが殺害方法が結びつかない。ロンドン警視庁のアーノルド警部が地元警察と協力して地道に積みあげていく不審車の目撃情報や村の巡査など素朴な田舎の日常風景が広がってきていい感じだ。結末の収まるところに収まるピースが心地よい。バートン・ミステリ他の作品も読みたい2022/09/11
ゆーかり
15
叔父の別荘を訪れた若者がバスタブに片脚をかけたまま死亡。自然死とは思えないが、密室の浴室での死因も不明。捜査にあたるのはスコットランドヤードのアーノルド警部。いつもはアマチュア探偵メリオンとコンビを組んでいるらしいが、この作品では流感で来られず。なんとなく緩い雰囲気もするのは書かれたのが1939年という時代のため?お茶に喜ぶ警部やファームハウスティーなど出てくるところが英国的。著者はジョン・ロード、セシル・ウェイの別名義も持つ多作家。原題 Death Leaves No Card2018/06/03
やっす
14
ジョン・ロードの別名義による作品の中でも代表作にあげられる事の多い作品。評判に違わず、なかなか良くできた作品だと感じました。密室での痕跡なき殺人という謎については、そのトリックが機械的というか専門的にすぎるきらいがあり、正直あまり評価できるものではない。それよりも、解説で述べられている通り『欠けていた最後のピースがはまった時』の全てが腑におちる爽快感こそ本書の一番の魅力ではないかと思います。地味な作風で、中盤の盛り上がりに欠けるなどの欠点もありますが、ロード(バートン)の巧さが光る一作です。2018/10/08