内容説明
17年前、テレビドキュメンタリー「幻の特攻艇震洋の足跡」が作られた。あの時話を聞かせてくれた元震洋隊の方々。久しぶりに訪ねると、彼らはこう言った。「もう誰も知りませんよ」。元第18震洋隊長、島尾敏雄の5作品『出孤島記』(一九四九年)『出発は遂に訪れず』(一九六二年)『私の文学遍歴』(一九六六年)『魚雷艇学生』(一九八五年)『震洋発進』(一九八七年)。残された島尾の証言を手がかりに、改めて「幻の特攻艇震洋の足跡」をたどる。
目次
第1章 特攻への道「私は震洋隊設定当初からの要員に属した」
第2章 フィリピン コレヒドール「元々、死に場所になるはずだった」
第3章 沖縄 金武「生き残ってだらしがないな」
第4章 島尾部隊進出「加計呂麻島といっても知っている人はありますまい」
第5章 出撃命令「ソーイン、シューゴー」
第6章 八月十五日「センソウハ、オワッタノカモシレナイ」
第7章 震洋の最期「幻の横穴のうつろが見えたようであった」
第8章 特攻の戦後「震洋体験を伏せておきたかった」
第9章 ノスタルジア「おーいシマオ中尉!」
第10章 誰も知らない特攻「一度も実戦を戦っていない」
二つのエピローグ
著者等紹介
馬場明子[ババアキコ]
1973年県立福岡女子大学卒業後、テレビ西日本入社。アナウンサーを経て制作部ディレクターに。「螢の木」で芸術選奨新人賞受賞。ドキュメンタリーを数多く手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kawa
27
太平洋戦争中、劣勢挽回のためにベニヤ板製のボートに爆弾を載せて自爆攻撃を試みた秘密兵器「震洋」とその搭乗員の知られざるドキュメント。その特攻は、ほとんど戦果が上がらず、多くの若人が輸送中や陸戦のなかで倒れていったという。今から見れば狂気のさたとしか見えないのだが、当時は画期的新兵器と称えられ特攻に志願することが名誉とされていたという、当時の雰囲気が怖い。生き残った特攻隊員も、自らの悔悟や手のひら返しの世相により人生を翻弄させられた。気の毒で言葉もない。語り手がいなくなる中で忘れてはいけない貴重な記録だ。 2019/12/06
ハザマー
1
これは、事実として伝承して欲しい悲惨な歴史の1ページ。戦争で亡くなられた精霊に衷心より哀悼の意を表したい。2019/11/29
wakazukuri
0
無念としか言いようがない。島尾敏雄かミホかの著書を読んだことはあるが、戦中の二人の恋愛のイメージだけが残って、震洋の記憶がない。今回改めてその関係の著書を読み、よくぞ調べてくれた。書籍を残してくれたと思う。「震洋」と「神風」がこんなにも違うのか。同じ特攻として戦地に出向いたのに、神風はその成果は言うまでもない。震洋はほとんどが特攻の機会がないか、あってもその途中で撃沈。無念だったと思う。生き残った兵士も息を潜めるように戦後を生き、語るものはいなかった。数人の証言は貴重だ。よくぞ調査してくれたと思う。2020/05/29