内容説明
陸軍軍医として独逸留学、青春を謳歌した記録「独逸日記」。多彩な資料から秘められた内容さえ補う現代語訳で西欧近代化を目指す明治初期の特権留学生活を追体験するドイツからの帰国後次々と発表し世の評判をさらった三作。「舞姫」の豊太郎、「うたかたの記」の小林、「文づかい」の巨勢はやはり鴎外自身の実体験に基づいていた…!?
目次
一八八四年/明治十七年
一八八五年/明治十八年
一八八六年/明治十九年
一八八七年/明治二十年
一八八八年/明治二十一年
著者等紹介
森鴎外[モリオウガイ]
本名森林太郎。1862(文久2年)に、石見国鹿足郡津和野で生まれる。本来は津和野藩亀井家の14代典医となるはずだが、時代が明治となって、典医だった森家は没落。大学卒業後、陸軍軍医となって、陸軍省派遣留学生として4年間ドイツに留学。帰国後は小説家・評論家・翻訳家として文学活動を盛んに行なう。また陸軍では軍医総監まで昇り詰め、晩年は帝室博物館総長も務める
荻原雄一[オギハラユウイチ]
学歴:学習院大学文学部国文学科卒業。埼玉大学教養学部教養学科アメリカ研究コース卒業。学習院大学大学院人文科学研究科国文学専攻修士課程修了。経歴:東京学芸大学講師などを経て、現・名古屋芸術大学教授。俳優座特別研究員。東京作家倶楽部会員。森鴎外記念会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
131
稀有な立派な人だ。行っていきなり授業にでて、学生や教授と交流し、社交界にも顔を出す。軍隊とともに移動し、演習に参加。現地の女性とは気負い無く会話し交流する。資金が潤沢なだけではなく、本人の人柄もそうさせたのだろう。滞在後半には、ナウマン氏が日本について書いた日本論に対しての半ナウマン論を書き、それが掲載される。右寄りでない正しい自信に充ちた愛国心。長男としての気概。特に妹との手紙のやり取りやそこに挟まれる和歌を楽しむ事から、深い愛情が行間にひそむ。何度も出てくる『シルレル珈琲店』が気になる。(続く)2019/08/04
たつや
5
森鴎外が明治17年に陸軍軍医として、ドイツに四年間留学した。その間に書かれた日記を本書に収録している。元は漢文体で現代人には読めたものではないが、萩原雄一氏のお陰で読みやすい現代語訳になってるので、面白く読めた。一人称が「おれ」ですが、元は「余」でしたので、私、拙者等のほうがしっくり来たのでは?とか、余分な事を考えた。とにかく、鴎外はまめに日記をつけていて感心する。2024/04/07
lovejoy
0
★★★2019/06/13
のん818
0
森鴎外の「独逸日記」の現代口語により、軍医としてドイツに留学した鴎外の日常を垣間見る。誰それとカフェに行った、酒を飲んだ、と異国で自由を謳歌する若者らしい日々の中に、「誰それという者を言い負かしてやった」などと得意気に書いてあったり、女性の容姿には少々厳しかったり。この時代に優秀な日本人が鴎外の周辺に多くいたということは、ドイツから学び近代化を図ろうという日本の思惑も見える。日記には全く登場しない、「舞姫」のモデルとなった鴎外の初恋の人とどの時点で出会ったのか?という、著者の研究考察が非常に面白かった。2024/06/16