内容説明
前作で人類を睡眠の呪縛から解放し、疲労を取り去る解毒剤を開発、右脳左脳を独立機能させ、両眼両手を別々に動かし、常人の六倍を誇る生産力のワグナー教授はアフリカを訪れた。豪雨に伴なう土石流に巻き込まれた助手が瀕死で帰還、辛くも脳だけを蘇生させ移植に成功した教授だが…
著者等紹介
ベリャーエフ,アレクサンドル[ベリャーエフ,アレクサンドル] [Беляев,Александр Романович]
ロシアのヴェルヌとも呼ばれる、ロシアSF界の第一人者。1884年3月16日スモレンスク市の司祭の息子として生まれ、法科学校卒業後、弁護士、新聞編集長として働く。1916年、脊椎カリエスを発症し、首から下の自由をなくして療養生活を余儀なくされるが、22年に療養生活を終え、民警、幼稚園などを経て郵政省職員となる。療養生活の体験を生かし、25年、雑誌『世界探検』に処女作『ドウエル教授の首』を発表、翌26年、郵政省を退職して専業作家となる。約20の長篇と、40の短篇を発表したものの、当時は「荒唐無稽である」「非科学的である」などの批評にさらされた。1942年1月6日、ドイツ軍占領下のプーシキン市で死去
田中隆[タナカタカシ]
1964年、千葉県船橋市に生まれる。県内の高等学校卒業後、ロシアへ留学。ハバロフスク国立教育大学ロシア語コース卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きゅー
11
ワグナー教授の奇天烈発明物語の続編。本作ではアフリカの地でワグナー教授が活躍をする。死体安置所から腕や足を持ってきて、自動機械として利用するやんちゃぶり。死体を有効活用することで人々は労働から解放されるんですよ、なんて力説するが、まっとうな人から「それは地獄絵図ですね。」と冷静なコメントをもらうワグナー教授。アフリカでは、死んだ人間から脳を取り出して、勝手にいろいろやってみる。知的好奇心が抑えられないとのたまうが、まさにマッドサイエンティストの典型例。古き良きSFを読みたい方にはおすすめ。2015/04/30
ニミッツクラス
9
15年の税抜2000円の初版を読んだ。未知谷のハードカバー。著者は「ドウエル教授の首」のベリャーエフで、「第十番惑星」のベリャーエフではない。本書は“ワグナー教授”物の4短編を収録で、表題作は2部構成となる。部内の章立ては細かいが読むには支障ない。同教授物は姉妹刊として「眠らぬ人」があり、本書と併せて微妙にマッドな科学者の巻き起こす珍騒動を楽しめる。カバーの折り返しに著者略歴はあるが、総説じみた解説は無い(作品の初出は判る)。表題作はハチャメチャ邦人作家の作品のノリで、かなり引き込まれる。★★★★☆☆2019/03/08
timeturner
3
ワグナー教授、最強だ。舞台がアフリカに移ったおかげで幻想法螺風味がより強烈になり、もはや科学が呪術のように見える。とはいえ現実になってる部分もあるからまんざら出鱈目というわけでもないんだよね。色鮮やかな密林風景が出てきたからか『ウィスキー&ジョーキンズ』を思い出した。法螺話という共通点もあるし。でも、実際にアフリカを見て書いたダンセイニに対して、ソ連から出たことのないベリャーエフがこれを書いたと思うとすごく切なくなる。閉じこめられた魂は、その分激しく羽ばたこうとするのかもしれない。2016/11/29
スターライト
3
『眠らぬ人』に続く、ワグナー教授の発明をめぐる物語。「空飛ぶ絨毯」「悪魔の水車小屋」「アムバ」「ホイッチ-トイッチ」の4篇を収録。「ホイッチ-トイッチ」はどこかで読んだことがあると思ったら、かつて岩崎書店から出ていた『学者象の秘密』の由。ワグナー教授によって脳を象に移植された人物の顛末を描いているが、作者は技術的な部分にはページをあまり割かず、それによって起こるドラマに力点を置くことで小説としての結構を重視したようだ。ただ、80年前の作品とあって古臭さは否めないが、ジュブナイルとして読む分には楽しめる。2015/04/04
llll'
0
2015/01/04