著者等紹介
ネミロフスキー,イレーヌ[ネミロフスキー,イレーヌ] [N´emirovsky,Ir`ene]
1903~1942。ロシア帝国キエフ生まれ。革命時パリに亡命。1929年「ダヴィッド・ゴルデル」で文壇デビュー。大評判を呼び、アンリ・ド・レニエらから絶讃を浴びた。このデビュー作はジュリアン・デュヴィヴィエによって映画化、彼にとっての第一回トーキー作品でもある。34年、ナチスドイツの侵攻によりユダヤ人迫害が強まり、以降、危機の中で長篇小説を次々に執筆するも、42年にアウシュヴィッツ収容所にて死去。2004年、遺品から発見された未完の大作「フランス組曲」が刊行され、約40ヶ国で翻訳、世界中で大きな反響を巻き起こした
芝盛行[シバモリユキ]
1950年生まれ。早稲田大学第一文学部卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
46
レオンMという男性にクリロフ事件の真相を聞く男性。やがてレオンMが死に手記が残される。その内容とは…という話中話。テロリストのターゲットとしてロシアの教育大臣クリロフに近づいた男性が、彼への共感に揺れながら任務遂行のその日を待ち続けるハードボイルド。2015/08/07
Y2K☮
18
読メのお蔭で出逢えた名著。出版社・未知谷にも感謝。翻訳ならではの読み辛さ、主格の曖昧さがあって(原文に忠実なのかな)なかなか流れに乗れなかったが、暗殺者レオンMがクリロフの担当医師になってからは一気読み。革命の理念、テロに対する良心の呵責に無頓着なMが、標的であるクリロフに関心を抱く過程に惹き込まれた。残忍で貪欲な政治家の併せ持つ勤勉さ、責任感、葛藤、そして重大なスキャンダルを纏う妻への一途な愛。彼も我々と同じ愚かで弱い人間なのだと気付いたMがテロを躊躇う姿に、それでも人を信じたいという著者の声を感じた。2015/01/03
踊る猫
13
イレーヌ・ネミロフスキーの作品を読むのはこれが初めて。帝政のロシアで革命家/テロリストが医師を詐称して権力者クリロフに近づき、奇妙な交友関係を結ぶというスジなのだけれど、ありがちと言えばありがちな「敵もまた人の子」というテーマに惹かれるものを感じる。もうひとつ無知を晒せばロシア革命に関してもなにも知らなかったので、こちら側にもう少し知識があれば本書の良き読者となれたのかなと思い、それが惜しまれてならない。ネミロフスキーの作品はもっと読んでみたいという気にさせられた。東欧・ロシアの文学はなかなか面白いと思う2016/07/28
きゅー
12
ロシア政府の大臣と、彼を狙う暗殺者という、普通であれば交わることのない二人の交流が綴られる。イレーヌの書く物語において、人は強さと弱さを兼ね備えたものとして現れる。全くの聖人が存在しないように、全くの悪人も存在しない。彼らは弱さゆえに悪を行い、無知ゆえに過ち、無理解ゆえに人を滅ぼす。その一方で、時に彼らは愛情ゆえに人を助け、憐れみゆえに人を許す。冷酷な人々が度々登場するが、彼らはイレーヌの筆によって裁きを受け、浄罪される。2014/09/14
ゆかっぴ
9
暗殺者レオンとその対象となる大臣クリロフ。非情な憎むべき相手と思っていたクリロフとの関わりのなかで、彼の愛情、使命、理想、怖れ、いろんな感情にふれ、自分と同じように揺れ動く人間であることに一種の親近感さえ抱く主人公。現代のテロリストにもそういった側面があるのだろうかと考えさせられました。2016/09/26




