内容説明
珠玉の幻想小説家M・ブリヨン。その特徴が顕著な初期作品から五篇を厳選する本邦初訳。一読垂涎の作品集。
著者等紹介
ブリヨン,マルセル[ブリヨン,マルセル][Brion,Marcel]
1895~1984。アイルランド系の父と南仏に先祖を持つ母の間にマルセイユで生れ、ラテン的知性とゲルマン的感性の対話の中に育つ。その広範な知識から美術評論家、考古学者、伝記作家、歴史家、小説家と多様な場面で活躍し、1964年アカデミー・フランセーズに入会
村上光彦[ムラカミミツヒコ]
1929年、佐世保に生まれる。1953年、東京大学文学部仏文学科卒業。現在、成蹊大学名誉教授、大佛次郎研究会会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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読書という航海の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mii22.
26
夜の闇に抱かれるような、また白昼夢にクラクラさせられるような、静寂と恐怖に満ちた心のざわめきを感じます。語り手である旅人が旅先で出会った人々は、生者なのか亡霊なのか...そして迷い込んだのは異世界なのか...美しい文章で幻想的な物語の世界にひととき浸れる珠玉の短篇集。2015/07/27
ぱせり
5
美しい文章。彼らの旅はいったいなんなのだろう。なぜここに着いてしまったのだろう。手の込んだ案内に導かれるのは暗い場所ばかりだ。そんなところに行ったらいけないよ、きっと怖ろしいことが起こるよ、戻れなくなるよ、と読みながら思うけれど、でも見てみたい、旅人がその扉を開けたその先に何があるのだろう、と期待してもいる。2020/10/28
gu
4
幻想小説らしい幻想小説というか。この世のものではない奇怪な人物や異様な出来事に出会う夜があり、日の出とともに現実が戻ってくる。眠って夢を見て目を覚ますことそのもののようだが一夜の夢幻が決定的な変化を主人公にもたらすところが通過儀礼的か。2022/05/27
ハルバル
4
「深更の途中下車地」は∞のレール、中心のない、つまり空虚な「正面のない街」など、明らかにウロボロスの蛇のような無限大の真空空間を書いていて、おそらく輪廻やループする世界なんだと思う。そこから美しい石像へと変化を遂げた足の悪い少女は運命から救済されたが、主人公と男はなおも終わりのない旅を続けざるを得ないのだろう。「旅の冒険」もおそらくは地獄に囚われた魂の物語ではないでしょうか(火口地帯は地獄を思わせる)…というのが一応の私の解釈ですが、他にも色々な想像が膨らんでいくような文章の素晴らしさを堪能しました2017/07/08
misui
4
五篇を収録。およそどれも詩的散文にプラスアルファして話がくっついている趣で、物語を楽しむというよりは意識の迷路をさまようのが眼目である。これは作者が己の内界を探るために書いているのだと思うが、だからといって読んで面白いかというと非常に言葉に困る。本書の中では内界の探索が上手く昇華された「なくなった通り」が一番楽しめた。ピラネージ風の建造物の中、普通に道を歩いていてはたどり着けない「なくなった通り」を求めて巡り歩く。オーソドックスなゴーストストーリーとしても楽しめる。2011/10/21
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- 和書
- 子熊物語 徳間文庫