内容説明
チェーホフ晩年の傑作中篇。
著者等紹介
チェーホフ,アントン・P.[チェーホフ,アントンP.][Чехов,Антон П.]
1860‐1904。庶民の子として生まれ、中学の頃から苦学を重ねた。モスクワ大学医学部在学中も家計を助けるため、ユーモラスな短篇を多数の雑誌に発表。社会的関心も高く、結核を患いつつ社会活動や多彩な創作を展開した
タバーフ,エカテリーナ[タバーフ,エカテリーナ][Табах,Екатерина]
1970年モスクワ市で、アニメーション監督Y.ノルシュテインを父に、美術監督F.ヤールブソワを母に誕生。87~93年チェーホフ記念モスクワ芸術アカデミー劇場付属演劇学校の舞台装置学科で学ぶ。ここで未来の夫、ロマン・タバーフと知り合う。97~98年モスクワのアニメーションスタジオの特別コースを修める。美術家、アニメーターとしてモスクワとサンフランシスコのスタジオで活躍。現在、夫と1男1女と共にアメリカ在住
中村喜和[ナカムラヨシカズ]
一橋大学でロシア語を学ぶ。日本貿易振興会勤務の後、東京大学、一橋大学、共立女子大学で、ロシア語を教える。専攻はロシア文化史。日露関係史にも関心をもち、論考を発表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Miyoshi Hirotaka
27
谷間の小さな村に住む食料雑貨店一家の物語。ここで起きていることは、広いロシアの縮図。村の顔役が買収され、工場が垂れ流す公害が黙認され、風土病の感染源は放置される。食料雑貨を隠れ蓑に密売紛いの取引で財を成す。刑事の長男は贋札づくりが副業。ある時、土地を巡る嫁同士のいさかいで赤ん坊を死なせてしまう。最後までいいことが起きないが、21世紀の世相や国際情勢に酷似している。ロシア文学が魅力的なのは時間と空間を超えた展開力。「人は全てを知ることは許されていない」は反語。たいていのことは身近な事例から予測できるのだ。2014/12/11
relaxopenenjoy
4
谷間のある町を舞台にした、どんよりと暗く、悪人は私欲ををむさぼり非道で、残酷なストーリーの中で、松葉杖さんやリーパとその母、名もなき老人と息子など、良心を持つ人の存在やふとした言葉が救いである。心に残る短編。2020/04/14
保山ひャン
4
工場廃液垂れ流し、ウォッカ密売、いんちき商売が横行する谷間の村で、精進して生きる者と、悪辣に世渡りする者と。人間の醜さを描かせたら天下一品のチェーホフが、この作品でも美人でやり手で蛇のように恐ろしい女を登場させる。後半、激情に駆られて凶行と罵倒に及ぶこの女のこわいことと言ったら!チェーホフ晩年の作品なのだが、それでも40歳。どれだけ深いのか!2016/02/02
ちあき
3
ある村のある家族の物語。メイドイン19世紀の中編なので小説作法はちがうし、描かれる絶望や孤独の質も当然ことなっているのだけれど、どうしても佐藤泰志の『海炭市叙景』を想起しながら読んでしまった。2011/04/17
東
1
初めて読んだロシア文学。 事前情報ゼロで手にとって読んだら怒涛の展開で驚いた。人生の不条理さ人間の冷酷さ醜さみたいなのが日常の生活の中で描かれてる。人生は長い、なんでもあるさ、ロシアはでっけんだ。っていう台詞が良かった。 情景描写も美しくて良かった。 ラストが切なかった。2023/08/31
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