著者等紹介
佐藤文香[サトウアヤカ]
1985年兵庫県生まれ。2006年、第2回芝不器男俳句新人賞対馬康子奨励賞受賞。09年、第1句集『海藻標本』により宗左近俳句大賞受賞。池田澄子に師事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あや
19
敬愛する俳人、佐藤文香さんの句集。2014年刊行。再々読になる。忘れていた句、以前読み飛ばしていた句、以前好きだった句がやっぱり好きだと思う句が顕ち上がる。 葉桜の影 睡蓮の葉ではなく/人待てば樹は春雨に重くなり/春や新聞悪い油をよく吸ふね2024/09/17
yumiha
19
俳句の本には珍しく、借りられるまでに1年を要した。佐藤文香はテレビで見ることもあるから人気あるんかな?「に」の縦棒のところに小さく「レンアイ句集」と読める。句集が出た時、作者は20代だから、レンアイ真っ最中だった(と思ふ)。か、といって内容は、読者が気恥ずかしくなるような胸きゅんでもドロドロでもなく、静かに自分の生を見つめ、的確なことばで綴られている。「柚子の花君に目があり見開かれ」「初恋や氷の中の鯛の鱗」「夜を水のように君とは遊ぶ仲」「遺影めく君の真顔や我を抱き」「また美術館行かうまた蝶と蝶」などなど。2016/03/01
太田青磁
17
柚子の花君に目があり見開かれ・初恋や氷の中の鯛の鱗・目薬の鋭利な水や夜の新樹・河岸段丘うちわに描かれた花火・夜を水のように君とは遊ぶ仲・月を刺す銀杏から月までの距離・セーターをたたんで頬をさはられて・梅が枝に触れて睫毛は君が瞳の・春深しみどりの池に木は倒れ・紫陽花や心は都営バスに似て・醒めてゐてひかりをひととみまがへる・冬晴れて君宛の手紙はすべて君に・冷えた手を載せれば摑む手であつた・水温むいつか拾つてきた葉つぱ・人待てば樹は春雨に重くなり・雪晴やビールの飲める喫茶店・また美術館行かうまた蝶と蝶2015/02/16
ひばりん
6
どこの書店だったか、「定型短詩界の宝」というようなPOPがついていたように記憶する。本当にそうだ。上手い、というのが俳句界で褒め言葉になるのか私には分からないが、どこまでも上手すぎて、いったいどんな言語野と五感をお持ちなのか想像もつかない。そう、言語と五感の間にほんの少しの隙間が設けてあって、そこが「上手い」。しかしその隙間から無限のポエジーが湧いて出て、それはもう「上手い」を超えている。特定の誰かに向けられているようで、すべての読者に届き、しかも読む者を独りにしてくれる。なぜそんなことができる?見事。2021/02/24
すずき
6
明るい句の方がイメージの飛躍や着眼点が大胆で、詠みたいもの、というか得意なものがすごくハッキリしている人という印象を受けた。2016/11/13