出版社内容情報
《内容》 細胞のシグナル伝達研究の過去、現在、そして未来が展望できる!
理解を助けるオールカラーの図を豊富に収載。基礎から最先端までを18の章に分けて解説。わかりやすい説明は他に類をみない。背景の知識や詳しい情報は側注で補足。
《目次》
1 プロローグ:シグナル伝達研究の起源とそれに関わった人々
1.1 「transduction」という言葉とその意味:1つの辞書と多くの視点
1.2 ホルモン:進化と歴史
1.2.1 細胞膜の障壁
1.2.2 プロトホルモン
1.2.3 最初の内分泌学者たち
1.3 ホルモン:定義
1.3.1 名前より中身が大事
1.4 神経伝達物質
1.5 麦角
1.6 受容体とリガンド
2 第一メッセンジャー
2.1 ホルモン
2.1.1 増殖因子
2.1.2 サイトカイン
2.1.3 血管作用性物質
2.1.4 神経伝達物質と神経ペプチド
2.1.5 親油性ホルモン
2.1.6 細胞内メッセンジャー
2.2 受容体へのリガンドの結合
2.2.1 結合様式の多様性
2.2.2 結合親和性の測定
2.2.3 KdとEC50:受容体への結合と細胞の応答
2.2.4 予備受容体
2.2.5 受容体のダウンレギュレーション
2.2.6 最初に発見された第二メッセンジャー:サイクリックAMP(cAMP)
3 受容体
3.1 アドレナリン(もう一度)
3.2 αおよびβアドレナリン受容体
3.2.1 アドレナリン受容体アゴニストとアンタゴニスト
3.3 アセチルコリン受容体
3.3.1 アセチルコリン
3.3.2 コリン受容体のサブタイプ
3.3.3 ニコチン受容体
3.3.4 ムスカリン受容体
3.3.5 ニコチン受容体関連アミノ酸受容体
3.4 イオンチャンネル共役型受容体
3.4.1 ニコチン受容体はイオンチャンネルである
3.4.2 疎水性の膜貫通配列
3.4.3 受容体の脱感作
3.4.4 その他の受容体共役型イオンチャンネル
3.5 7回膜貫通型Gタンパク質共役型受容体スーパーファミリー
3.5.1 7回膜貫通型受容体の分類
3.5.2 受容体の多様性:種類と特異性
3.6 受容体とリガンドとの相互作用と受容体の活性化
3.6.1 2つの状態の平衡により受容体の活性化を説明する
3.6.2 受容体はリガンドがなくても活性化されうる
3.6.3 受容体の二量体化
3.7 細胞内へのシグナル伝達
3.7.1 受容体とエフェクター:同一のものか,別々のものか
3.7.2 受容体とエフェクターとの組み合わせ
3.8 7回膜貫通型受容体の細胞内ドメインとシグナル伝達
3.9 アドレナリン(さらにもう一度)
4 GTP結合タンパク質とシグナル伝達
4.1 代謝調節因子としてのヌクレオチド
4.1.1 ATPは見かけとはかなり異なる
4.2 GTP結合タンパク質,Gタンパク質,GTPアーゼ
4.2.1 Gタンパク質
4.2.2 活性のスイッチを切る:GTPアーゼのスイッチを入れる
4.2.3 αサブユニット
4.2.4 βγサブユニット
4.3 Rasタンパク質
4.3.1 癌遺伝子産物として発見された単量体型GTP結合タンパク質
4.3.2 Rasのサブファミリー
4.3.3 構造
4.3.4 翻訳後修飾
4.3.5 あらゆるところに存在するGTPアーゼ
4.3.6 癌を誘導するRasの変異
4.3.7 Rasの機能
4.4 RasのGTPアーゼ活性を促進するタンパク質
4.4.1 RasGAP
4.4.2 GTPアーゼ活性化の機構
4.4.3 GEF:グアニンヌクレオチド交換因子
4.5 小論:サブユニットの解離をともなわないGタンパク質の活性化
4.5.1 フェロモンに誘導される酵母の接合反応
4.5.2 昆虫細胞における哺乳動物のβアドレナリン作動性シグナル伝達の構築
5 GTP結合タンパク質に共役するエフェクター酵素:アデニル酸シクラーゼとホスホリパーゼC
5.1 アデニル酸シクラーゼ
5.1.1 サイクリックAMP(cAMP):最初に発見された第二メッセンジャー
5.1.2 cAMPはATPから合成される
5.1.3 アデニル酸シクラーゼとその活性調節
5.1.4 コレラ毒素,百日咳毒素とADPリボシル化
5.2 ホスホリパーゼC
5.2.1 イノシトールリン脂質がシグナル伝達に果たす役割についての初期の知見
5.2.2 ホスホリパーゼファミリー
5.2.3 PLCのアイソザイム
5.2.4 PLCδ:プロトタイプ
5.2.5 PLCの活性調節
6 視覚のシグナル伝達の調節
6.1 光受容体の感受性
6.2 光受容体の機構
6.2.1 光受容体細胞
6.2.2 桿体細胞
6.3 順応:負の調節因子としてのカルシウム
6.4 ロドプシンの光励起
6.5 スイッチオフの機構
6.5.1 レチナールはインバースアゴニストか?
6.6 無脊椎動物の光伝達についての備考
7 カルシウムとシグナル伝達
7.1 新しい第二メッセンジャーの発見
7.2 カルシウムと進化
7.3 Ca2+とMg2+との違い
7.4 遊離Ca2+,結合Ca2+,沈着Ca2+
7.5 細胞質Ca2+濃度は低く保たれている
7.6 細胞質Ca2+濃度の変化の検出
7.6.1 Ca2+イオノホアを用いてCa2+濃度を上昇させる
7.6.2 Ca2+の濃度変化を検出する
7.7 細胞質Ca2+濃度を上昇させる機構
7.7.1 2つのCa2+供給源
7.8 単一細胞における細胞質Ca2+濃度変化のパターン
7.8.1 時間的側面
7.8.2 空間的詳細の解析
7.8.3 局所的なCa2+放出と広域的なシグナル
7.8.4 興奮性細胞におけるCa2+シグナル
7.8.5 非興奮性細胞におけるCa2+シグナル
7.9 細胞内第二メッセンジャーの局在
7.9.1 段階的な応答とCa2+誘導性Ca2+放出
8 カルシウムシグナリング
8.1 タンパク質によるカルシウムの結合
8.1.1 Ca2+を結合するポリペプチドモジュール
8.2 カルシウム濃度上昇の効果
8.2.1 カルモジュリンとトロポニンC
8.2.2 Ca2+/カルモジュリン依存性キナーゼ
8.2.3 その他のCa2+/カルモジュリン依存性酵素
8.2.4 カルモジュリンによる調節を受けないカルシウム依存性酵素
8.3 カルシウムシグナリングのパラダイム
8.3.1 神経伝達物質の分泌の引き金
8.3.2 横紋筋の収縮の開始
8.3.3 平滑筋の収縮
8.3.4 心収縮のアドレナリンによる制御
9 リン酸化と脱リン酸:プロテインキナーゼAとプロテインキナーゼC
9.1 細胞機能のスイッチとしてのタンパク質リン酸化
9.2 cAMPとシグナルの増幅
9.3 プロテインキナーゼA
9.4 プロテインキナーゼAと転写調節
9.4.1 CREB転写因子の活性化
9.4.2 脱リン酸によるcAMP応答配列の減弱化
9.5 ERKの活性化とプロテインキナーゼA
9.6 PKAを介さずに伝達されるcAMPの作用
9.6.1 サイクリックヌクレオチドによるイオンチャンネルの調節
9.6.2 Epac:cAMPによって直接調節されるグアニンヌクレオチド交換因子
9.7 プロテインキナーゼC
9.7.1 cAMPに依存しないリン酸化作用の発見
9.8 プロテインキナーゼCファミリー
9.9 プロテインキナーゼCの構造ドメインと活性化
9.9.1 C1~C4ドメイン
9.9.2 偽基質
9.9.3 活性化
9.10 PKCを活性化するDAGやその他のリン脂質のさまざまな供給源
9.11 PKCアイソフォームの特異的な局在
9.12 PKCを繋留するタンパク質:STICK,PICK,RACK
9.12.1 生きるか死ぬか:PKCシグナル伝達複合体がハエ叩きからの回避行動において果たす役割
9.13 PKCと細胞のトランスフォーメーション
9.13.1 ホルボールエステルの作用を伝える転写因子の探索
9.13.2 PKCアイソフォームの過剰発現と細胞のトランスフォーメーション
9.14 PKCと炎症
9.14.1 内皮細胞や白血球の活性化とホルボールエステル
9.14.2 呼吸性バーストの調節におけるPKCの役割
10 増殖因子:基本的な概念の整理
10.1 ウイルスと腫瘍
10.2 NGFの発見からEGFへ
10.3 血小板由来増殖因子
10.4 トランスフォーミング増殖因子
10.5 命名の問題
10.6 小論:細胞周期
10.6.1 細胞周期の各段階とランダムな移行
10.6.2 細胞周期を駆動する分子
10.6.3 細胞周期を駆動する因子の管理
10.7 小論:癌とトランスフォーメーション
10.7.1 定義
10.7.2 癌の本質
10.7.3 悪性腫瘍に特徴的な変化
10.7.4 悪性腫瘍の基礎となる遺伝子変異
10.7.5 シャーレの中で癌をつくる
11 受容体型チロシンキナーゼによるシグナル伝達経路
11.1 チロシンキナーゼファミリー
11.1.1 ホスホチロシンの発見
11.1.2 v-Srcとその他のチロシンキナーゼ
11.1.3 チロシンリン酸化を介して伝えられるその他の作用
11.2 受容体型チロシンキナーゼ
11.2.1 受容体の架橋が活性化を引き起こす
11.2.2 受容体シグナル伝達複合体の形成
11.2.3 Src相同ドメインと受容体シグナル伝達複合体の形成
11.3 シグナル伝達経路の枝分かれ
11.3.1 PLCγ-PKCシグナル伝達経路
11.3.2 Rasシグナル伝達経路
11.3.3 Ca2+/カルモジュリン経路
11.3.4 PI 3-キナーゼの活性化
11.3.5 転写因子の直接的なリン酸化
11.4 受容体シグナル伝達経路の切り替え:7回膜貫通型受容体によるERKの活性化
11.4.1 受容体のリン酸化を介した経路の切り替え
11.4.2 トランス活性化による経路の切り替え
12 非受容体型チロシンキナーゼによるシグナル伝達経路
12.1 非受容体型チロシンキナーゼファミリー
12.1.1 T細胞受容体のシグナル伝達
12.1.2 IgE受容体とエキソサイトーシスのシグナル
12.2 インターフェロンとその作用
12.3 癌遺伝子,悪性化とシグナル伝達
12.3.1 ウイルス性癌遺伝子
12.3.2 非ウイルス性癌遺伝子
12.4 小論:非受容体型チロシンキナーゼとその活性化
13 PI 3-キナーゼ,プロテインキナーゼBとインスリン受容体を介したシグナル伝達
13.1 インスリン受体のシグナル伝達:解明には時間がかかった
13.2 PI 3-キナーゼ
13.2.1 PI 3-キナーゼファミリー
13.2.2 PI 3-キナーゼの働きを解析する
13.2.3 PI 3-キナーゼの活性化経路
13.2.4 プロテインキナーゼBとPI(3,4,5)P3を介した活性化
13.3 インスリン:グリコーゲン合成におけるIRS,PI 3-キナーゼ,PKBの役割
13.3.1 インスリン受容体からPKBへ
13.3.2 PKBからグリコーゲン合成へ
13.3.3 グルコース輸送とタンパク質合成の活性化におけるPI 3-キナーゼの役割
13.4 3位リン酸化イノシトールリン脂質が媒介するその他の過程
13.5 複数のキナーゼと複数のリン酸化部位:複数の入力を統合するPDK1
13.6 結局のところ,誰がインスリンを発見したのか?
14 接着分子とシグナル伝達
14.1 接着分子
14.1.1 接着分子の命名
14.1.2 免疫グロブリンスーパーファミリー
14.1.3 インテグリン
14.1.4 カドヘリン
14.1.5 セレクチン
14.1.6 軟骨結合タンパク質
14.2 接着分子と細胞の生存
14.2.1 Jun N末端キナーゼ(JNK)は剥離した上皮細胞のアポトーシスを誘導する
14.2.2 細胞分散因子は内皮細胞をアポトーシスから救出する
14.3 接着分子と細胞周期の調節
14.4 腫瘍抑制因子としての接着分子
14.4.1 内皮細胞と上皮細胞におけるアドヘレンスジャンクションとデスモソーム
14.4.2 アドヘレンスジャンクションの喪失は脱分化を誘導する
14.4.3 βカテニンは上皮細胞の脱分化に必須の役割を果たす
14.4.4 ヒトの癌におけるβカテニンとAPCの変異
14.4.5 接触阻止におけるカドヘリンの役割
14.5 小論:アポトーシス
14.5.1 アポトーシス細胞の特徴
14.5.2 細胞内プロテアーゼのカスパーゼがアポトーシスを引き起こす
14.5.3 カスパーゼの細胞内標的
14.5.4 カスパーゼの調節
15 白血球遊走と接着分子
15.1 炎症とそのメディエーター
15.1.1 腫瘍壊死因子α:抗腫瘍剤か炎症性サイトカインか?
15.2 TNFαと内皮細胞における接着分子の発現調節
15.2.1 白血球におけるケモカインとインテグリンの活性化
15.2.2 白血球の血管外遊走における3つの段階
16 セリン/トレオニンキナーゼ型受容体を介したシグナル伝達
16.1 TGFβファミリーの増殖因子
16.1.1 2種類のTGFβ受容体:1型,2型
16.1.2 補助受容体:β-グリカンとエンドグリン
16.1.3 TGFβによる受容体の活性化
16.2 下流のシグナル伝達:ショウジョウバエと線虫,そしてSmad
16.2.1 Smadはシグナル伝達においてさまざまな役割を果たす
16.2.2 受容体の機能を調節する受容体結合タンパク質
16.2.3 Smadによる転写調節
16.2.4 腫瘍抑制におけるSmadの役割
17 タンパク質の脱リン酸とリン酸化
17.1 脱リン酸の重要性
17.1.1 チロシンホスファターゼ
17.1. 受容体様チロシンホスファターゼ
17.1.3 細胞質型チロシンホスファターゼ
17.2 シグナル伝達におけるチロシンホスファターゼの役割
17.2.1 ホスホチロシンの脱リン酸による正の制御
17.3 脱リン酸による負の制御
17.3.1 二重特異性ホスファターゼMKP-1と各種のチロシンホスファターゼによるMAPキナーゼの調節
17.3.2 SHP-1,エリトロポエチン受容体,STAT5,JAK2
17.3.3 リン酸化タンパク質やリン脂質のホスファターゼであるPTEN
17.4 セリン/トレオニンホスファターゼ
17.5 セリン/トレオニンホスファターゼの分類
17.5.1 グリコーゲン代謝の調節におけるPP1の役割
17.5.2 T細胞の増殖調節におけるPP2B(カルシニューリン)の役割
18 タンパク質のドメインとシグナル伝達
18.1 構造的に保存されたタンパク質のモジュール
18.1.1 ドメインの同定
18.1.2 ドメインの機能
18.2 ペプチドモチーフに結合するドメイン
18.2.1 SH2ドメイン
18.2.2 PTB/PIDドメイン18.2.3 SH3ドメイン
18.3 タンパク質や脂質と結合するドメイン
18.3.1 PHドメイン
18.4 Ca2+に結合するモジュール
18.4.1 EFハンドモチーフ
18.4.2 C2ドメイン
18.5 キナーゼドメイン
18.5.1 プロテインキナーゼは共通のドメインをもつ
18.5.2 キナーゼ活性を調節する構造要素
18.5.3 Srcの調節ドメインはキナーゼ活性を調節する
目次
プロローグ:シグナル伝達研究の起源とそれに関わった人々
第一メッセンジャー
受容体
GTP結合タンパク質とシグナル伝達
GTP結合タンパク質に共役するエフェクター酵素:アデニル酸シクラーゼとホスホリパーゼC
視覚のシグナル伝達の調節
カルシウムとシグナル伝達
カルシウムシグナリング
リン酸化と脱リン酸:プロテインキナーゼAとプロテインキナーゼC
増殖因子:基本的な概念の整理
受容体型チロシンキナーゼによるシグナル伝達経路
非受容体型チロシンキナーゼによるシグナル伝達経路
PI3-キナ-ゼ、プロテインキナーゼBとインスリン受容体を介したシグナル伝達
接着分子とシグナル伝達
白血球遊走と接着分子
セリン/トレオニンキナーゼ型受容体を介したシグナル伝達
タンパク質の脱リン酸とリン酸化
タンパク質のドメインとシグナル伝達
著者等紹介
上代淑人[カジロヨシト]
京都大学医学研究科教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。