内容説明
警察官という職務の傍ら、昭和初期から山形で昆虫調査を続けた野の研究者・白畑孝太郎(一九一四~一九八〇)。地元でも忘れられつつある、その偉大な足跡を掘り起こし、「昆虫巡査」と呼ばれた生涯を浮き彫りにする。
目次
第1章 標本に埋もれて
第2章 生い立ち
第3章 警察官として
第4章 大陸に渡る
第5章 断たれた夢
第6章 新たな幕開け
第7章 研究の途
第8章 博物館に託した思い
第9章 『山形県昆虫誌』の構想
第10章 夢の軌跡
著者等紹介
永幡嘉之[ナガハタヨシユキ]
1973年兵庫県生まれ。専門は保全生態学。ブナ林にすむカミキリムシなどの昆虫の調査研究、山形県内の希少植物・昆虫の調査と保全に当たる。日本チョウ類保全協会理事。山形市在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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orangepelican
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白畑孝太郎という、在野の研究者でありながら、昆虫や自然史の研究、そして自然保護・保全に多大な功績を残した人物。恥ずかしながら、この本を読むまで知りませんでした。昆虫の世界には在野の研究者がたくさんいらっしゃいますが、このような先人の功績も忘れてはならないとことだと思います。白畑氏の生涯は読み物としても面白いし、また、戦前から高度経済成長期以降にかけての、現在とは大きく変わってしまった自然環境に関する記述についても大変興味深く、貴重な記録だと思う。虫屋さんのみでなく、自然保護等に関る方には必読の書だと思う。2015/05/08
Kumo
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一読して明らかなことに、白畑は山形県の昆虫相解明史とともにあった。在野の研究者の常だが、発表した著作が少ないなど、その人物の来歴を追跡することが難しい。著者は白畑の遺品のうち、標本だけでなく環境写真等の綿密な記録をも繙くことで、白畑が真に残そうとしたものの分析を試みた。新聞連載が元というだけあり、各章が短くて拾い読みしやすい。巻末にある白畑の著作一覧は、抄録でない方が嬉しかった。2025/04/11