内容説明
社会のあり様や働き人の暮らし、家族の営みや自然の移り変わりを、日々を生きる者の飾らない眼差しでとらえ、深く柔らかくそしてユーモラスに練り上げた言葉でうたう詩人・吉野弘。名詩「I was born」や「祝婚歌」など、やさしく誠実な者たちの魂の重力を探った戦後五十年にわたる詩群のなかから代表作品を選び、季節・生活・言葉遊びなどテーマごとに配置する。
目次
四季
生きる
日常さまざま
言葉いろいろ
漢字遊び
空山海・樹ほか
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しいたけ
127
少しずつ読みすすめてきた。日々の営みのごちゃごちゃが、気どりなくうたわれる。『生きることは/そのまま過ちであるかもしれない日々』にうなる。私の日々は過ちで出来ている。『いかが、お過ごしですか』とは『あなたはどんな過ちをしていますか』との問い合わせだとの詩がある。これから人に「いかが、お過ごしですか」と問われるたびに、私はうつむき胸内の汚れをそっと隠そうとするだろう。『心に耳を押し当てよ/聞くに堪えないことばかり』との詩も。伏せた目をあげニヤリと笑ってやりたくなる。みんなそうでしょ。そうなんでしょ。2018/07/30
へくとぱすかる
93
最も有名な作品は、「I was born」と「夕焼け」であるにちがいない。しかし詩人自身の意向で、あえて「過去の名作」にこだわらずに作品を選んだという。だから詩人の現在(刊行時)にも出会える。漢字をテーマにした作品群は、単なることば遊びのようだが、深い意味や鋭いアイロニーを込めたりして、なかなかただ者な作品ではない。他の作品も日本語の「詩」をしっかり感じさせるものばかり。でも、それでもやっぱり「夕焼け」がいい。私にはかつてどこかで見た、町に落ちる夕陽の光景と重ね合わせて、じっくり味わえる作品なのである。2021/04/25
Rin
69
[借本]職場の先輩より。私は詩といえば長田弘さんくらいしか読んだことがなかったけれど、吉野さんも素敵な言葉をえらんで丁寧に綴っている。普段生活をしていて、意識しないまま通り過ぎていることたち。何気なく使っている漢字。そこから遊び心たっぷりな詩がうまれていた。さらりと読めるものから、心に留めておきたいものまで。生きること、家族のこと。漢字のことから自然のことまで多種多様な詩が詰まった一冊。お気に入りなったいくつかは書き留めておいてもいいかなぁと思えた。長田さんの詩集も読み返したくなりました。2019/02/20
団塊シニア
56
この詩集のなかで「夕焼け」が秀逸である、やさしい心の持ち主はいつでもどこでも受難者というフレーズ、そして電車で2度席をゆずり、3度目は席を立たなかった娘、なぜだろう?何度も読んだ、結局心の葛藤があったのかも、押し出された老人に対する気遣いなのかもしれない、読み手に考えさせる深い内容の詩である。2016/01/11
もちまる
33
言葉や漢字の知識が込められた詩集に感じました。短い詩でも、軽く読むというより、ふむふむと読みました。2019/07/27