内容説明
パリのヴォケール館に下宿する法学生ラスティニャックは野心家の青年である。下宿にはゴリオ爺さんと呼ばれる元製麺業者とヴォートランと名乗る謎の中年男がいる。伯爵夫人を訪問したラスティニャックは、彼女が、ゴリオの娘だと知らずに大失敗をする。ゴリオは二人の娘を貴族と富豪に嫁がせ、自分はつましく下宿暮らしをしていたのだ。ラスティニャックはゴリオのもう一人の娘に近づき社交界に入り込もうとするが、金がないことに苦しむ。それを見抜いたヴォートランから悪に身を染める以外に出世の道はないと誘惑されるが、ヴォートランが逮捕され、危やうく難を逃れる。娘たちに見捨てられたゴリオの最期を見取った彼は、高台の墓地からパリに向かって「今度はおれとお前の勝負だ」と叫ぶ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みつ
28
藤原書店の『バルザック「人間喜劇」セレクション」全13巻の最後に取っておいた一冊。何度も読んだ作品だが、「人間喜劇」群(半分以上が初読)を集中して読んだ後立ち戻ると、別の作品に再登場した人物がここでは一堂に会していたことが知れ、冒頭の詳細描写と相まって、かつては多すぎると思われた登場人物たちが物語の推進力になっていることがわかる。娘を溺愛するゴリオ、上昇志向の美貌の若者ラスティニャック、得体の知れない悪人のヴォートランが、賄い付きの下宿屋で織りなす欲望の物語は、徹頭徹尾世俗的でありつつも聖性を帯びる。➡️2022/08/03
Kouro-hou
18
鹿島訳「ゴリオ爺さん」。人間喜劇では一番面白いのではないでしょうか。若くて頭も顔もよさげで根は悪くないけどいかせん金が無さ過ぎて、良心にも従って行動はするんだけどカラータイマー程も持続しない野心家の代名詞ラスティニャックとか、やり過ぎな父性愛の権化で最期の台詞は歌舞伎もびっくりの大容量、いろいろとやり過ぎなゴリオ爺さん、台詞もカツラも一々決めててカコエエ悪の中年男ヴォートラン、でもアナタ結局美少年が好きなだけだよね?の辺りのバランスも良い。当時のパリの貧乏下宿屋のリアル描写は最高としか言いようが無い。2014/11/04
じゅん。
10
強烈で魅力溢れる人物が数多く登場するし、パリの社交界に渦巻く欲望をこれでもかと書き連る。中盤あたりから怒涛の展開にそして、ラストのゴリオ爺さんの長い演説(少し長すぎる)…いや、面白かった。2021/12/04
忽那惟次郎8世
8
なかにし礼が「がんに生きる」の中でとても推奨していたので読みました これから読まれる方には巻末に当時のフランスの貨幣の現在貨幣価値が出ているので 先にそれをチェックすることをオススメします。マダムクチュールの下宿料が1800フラン(年180万円!)とか ヴォケール夫人が1スーづつ貯めて4万フランの貯金がある(五十円づつ貯めて4千万円の貯金がある!!) 貨幣価値をチェックしないで読むと意外な物語に気が付きません それにしても日本で言えば江戸時代(末期) あちらでは金融・証券が発達していたのには驚かされます2021/09/20
訪問者
8
やはりバルザックは面白い。ゴリオ爺さんもなかなかユニークな人物だが、何といってもヴォートランとラスティニャックが主役だろう。ラストのパリに戦いを挑むラスティニャックがかっこよすぎる。2018/10/03