内容説明
眩い光に包まれた1945、ヒロシマ。あの夏の光がつくりだした影のなか、ひとりの少女と青白い人びとの想いが交差する。―ことり、ことり―再生をねがい、静かな悲しみを軌道に乗せてトラムはゆっくりと動きだす。遠ざかることのない、あの日の記憶の物語。
著者等紹介
北森みお[キタモリミオ]
広島県呉市生まれ。広島市在住。大阪教育大学卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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カナン
34
広島出身の作者が描いたあの夏の日。「遠ざかることのない、あの日の記憶の物語」。はら、と頁を捲ると目次には「風鈴草」「星玉すくい」「銀河灯ろう」と、ひどく美しいことばが並ぶ。「サツキ」から「ナガツキ」までの五章で構成された1945年の広島。白魔女の香草菓子。ショパン。星蛍。歌う夜奏花。水色のリボン。ツィゴイネルワイゼン。ラベンダーのお茶。流星火球。どれもが童話の世界のようで、ふわふわとした水彩画の世界のようで、みんなちゃんと其処にいて、でも二度と帰れない陽炎のような世界。「そしたらあたし、おうちに帰るわ」→2013/05/28
草食系
21
熱く赤い塊、爆発的なエネルギーで、沢山の命を一瞬にして奪う。あの日、広島。迷い子を見逃さないかのように、走る路面電車、星降る夜の道行。あの子が触れたかもしれない石を集め続けるお母さんには影がない、蜂蜜の焼菓子を楽しみにしていた少女はもういない。綺麗と悲しさはこんなふうに重なり合うのか、気高く美しい、はっきりと語らず気付くと悲しい、静かに入り込んできて空気が揺らぐ。飛び立つ魂のような光の乱舞、静寂の中に色彩が、夜の中に慰めが、悲しい気持ちが内にこもって泣きたくなる、良書でした。2013/07/27
辛口カレーうどん
6
広島のあの、悲劇の日から9年後の世界。 会えなくなってしまった人を探し、さ迷う人々と、主人公の少女の幻想的な交流の物語。銀河鉄道の夜に似ていますが、こちらの方が、更に夢の中のように、淡い世界。 星を数える少年、愛しい人を探してヴァイオリンを弾き続ける男性、星玉すくいのおばあさん、水色のリボンの女学生…すべてこの世にいないのでしょうか。それとも、主人公のいる世界の方が、現世ではないのか 儚くちょっぴり悲しいお話でした。2014/09/13
野比ぺん太
4
このお話の中で、まさに今日...9月11日のお話があって、びっくりしました。 (...といっても、1954年が舞台ですが...) ...でも、何かを感じずにはいられませんでした。 僕はこの不思議な世界観、好きです。 ムギさんと一緒に世界に触れてみたいな...と感じました。 宮沢賢治さんの『銀河鉄道の夜』も読み返したくなりました。2010/09/11
まち
3
宮沢賢治の銀河鉄道の夜に似てると感じながら、読み進めていくと様々な色に溢れたお話。様々な香草のビスケットとともに、身近な色や音が輝いている。とても不思議な気持ちになるお話。そして会いたくても会えない悲しい気持ちになるお話。2013/04/04
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