内容説明
生キルニ難イ世ノ中ノドコゾニ妙薬ノナイモノカ。御利益アリマス一陽来復「厄除け詩集」。多彩な表現で鮮やかに息づく井伏鱒二の名調子。
目次
厄除け詩集(なだれ;つくだ煮の小魚;歳末閑居 ほか)
譯詩(題袁氏別業;照鏡見白髪;送朱大入秦 ほか)
拾遺抄より(冬)
著者等紹介
井伏鱒二[イブセマスジ]
1898年2月15日広島県福山市に生まれる。早稲田大学文学部仏文科中退。1993年7月10日没。1938年『ジョン萬次郎漂流記』で第6回直木賞、1950年『本日休診』などで第1回読売文学小説賞、1956年『漂民宇三郎』などで第12回日本芸術院賞、1966年『黒い雨』で第19回野間文芸賞、文化勲章、1972年『早稲田の森』で第23回読売文学賞随筆紀行賞他著書多数
金井田英津子[カナイダエツコ]
1955年群馬県桐生市に生まれる。個展・国際展で版画作品を発表する傍ら本の造本・装幀・挿画を手がける。第十八回赤い鳥さし絵賞、第三十八回造本装幀コンクール審査員奨励賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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吉田あや
61
降り積もる雪のように、静かにゆっくりと憂愁が滲む井伏鱒二の詩たち。その中でも特にお気に入りの「なだれ」。『峯の雪が裂け 雪がなだれる そのなだれに 熊が乗ってゐる あぐらをかき 安閑と 莨(たばこ)をすふやうな恰好で そこに一ぴき熊がゐる』在るがまま眼前に広がる自然への畏怖と憧憬が綯交ぜになったような詩は、なだれという緊迫の場面でありながらもその中心で安閑と鎮座する熊に依って、流氷がのんびりと美しく裂けるかの如く悠然と映り、ユーモラスな景色にさえ思えてくる。2023/07/13
古古古古古米そっくりおじさん・寺
58
先日、井伏鱒二の『厄除け詩集』を読んですっかり気に入った。朝目覚めたら本棚の本がほとんど無くなっていても、『厄除け詩集』か『木山捷平全詩集』のどちらかが一冊残っていれば退屈もせず淋しくもないだろう。あの人達の本はそういう本である。前回は講談社文芸文庫版で読んだのだが、再読するなら違う版で読みたいと、こちらを借りてきた。見事な絵である。詩と絵がいい感じで共存している。欲しくなるタイプの本だが、文芸文庫で私が好きだった「加藤清正がウンコをする詩」は掲載されていなかった。あそこでもう一度笑いたかったのだが。2019/08/24
くまさん
31
静かに酒をついで勧める相手の横顔は、世を儚み帰るべき故郷を思い描いていたか、あるいは出世の道を歩みはじめることにどこかやましい思いをめぐらせていたか、それはわからない。咲く花に人生を、またそれが風雨で散ることに人の別離を重ね合わせた唐の于武陵の詩を、「「サヨナラ」だけが人生だ」と訳したことで名高い井伏鱒二さんの謎めいた詩集だが、花は散ってもまた咲きほこるように、生きているかぎり別離の先にはあらたな出会いが待っている。中秋の名月から「寒さが実力をもって」冷たい風が吹く季節に、風邪を引かないために読んだ。2018/10/31
たまご
28
なんと言葉のリズム,選択が刺さってくる.それにこの版画なんて,すごい本です. カネヲツカッタ顔モセヌ,何と粋な.蛸のぶつ切りは臍みたいだ,臍…! 互いに生きて返らなんだ,「サヨナラ」ダケガ人生ダ. 下部温泉とか,よしの屋とか検索しちゃいましたよ.2017/03/15
五月雨みどり
14
ついこないだの読書会で音読のあった、有名な「サヨナラだけが人生だ」の詩。井伏鱒二って、スゴいな。って感動したけど、あれー、家にそれ載ってる詩集あったわ。いつ読んだっけ、忘れてた。いや、読んでない、版画が良くて買って、それで満足して本棚に閉まっていたんだ。で、読んだ。改めて、素晴らしいわ、井伏鱒二。版画も然り。金井田英津子。昭和の初期のノスタルジー。2020/02/23
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