出版社内容情報
藤脇 邦夫[フジワキクニオ]
内容説明
もしも、2017年4月1日に消費税10%が施行されていたら―。出版不況の中、窮地に陥った経営破綻寸前の老舗出版社が最後の財産として残しておいた版権をめぐって、暗躍する出版業界の俗物たちが巻き起こす狂騒と波乱。消費税10%の施行日に向かって、大手出版社、広告代理店、印刷所、製紙会社、作家、取次、書店、外資まで巻き込んだ一大買収劇が始まる。誰が最後に「本」を救うのか。
著者等紹介
藤脇邦夫[フジワキクニオ]
1955年広島県生まれ。大学卒業後、専門学校、業界誌を経て、1982年出版社に入社。2015年に定年退職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Y2K☮
44
出版業界や文壇の裏側を描いた問題作。一応業界人なので元ネタがかなり分かった。小説としては材を詰め過ぎて調理し切れていない。題の付け方も疑問。ノンフィクションで書けば面白かったけど、さすがに無理か。とはいえ伝わるものはある。想像以上の危機的状況。少し前に取次の地図共販が倒産した時も他人事じゃなかった。図書館やアマゾンなど便利なものを否定もできない。現状を見据えて新たな道を探らねば。そのためのヒントは確かに提示されていた。逆算、文芸誌の必要性、委託販売の是非。そして版元、取次、書店の連携。商売は売ってナンボ。2017/05/03
宇宙猫
21
★★ 企業小説のライト版みたい。最後も安易すぎるんじゃないか。2017/07/06
阿部義彦
19
白夜書房出身のライターによるあくまでフィクションの形を取った、出版に関する身も蓋もない近未来を描き出したある種のディストピアとも言えます。「漫画雑誌は出版業界全てに必要なジャンルですが、小説雑誌が必要なのは当の作家だけじゃないですかね?私は営業の人間ですから廃刊を主張します。」「ハッキリ言っておくと私は図書館で借りて本を読むのを利用者と読んでいて、読者とは買って本を読む人間だと思っている。これが書店にとっての、本に対する矜持だと思う。」筒井康隆さんの「大いなる助走」を彷彿させる内輪もめ等、有るある多数。2017/05/05
sakai
16
実在の会社の名前をもじってるので頭の中で思い浮かべようとしてかなり混乱した。勉強になる部分もあるし、面白くないわけではないのだが、なかなか読み進めるのに時間がかかった。2018/10/26
りと
11
登場人物がうまく把握できなかったり、なんだかあまり入り込めなかった。ただ、出版業界というのが不安定な業界で、大変な状況になってるのは内容からよく分かった。街から本屋さんが消え、ネット販売に押され、図書館も少なからず影響して、大型書店まで廃業になる昨今。賞も多々あって、作家さんも次々出てくるけど、執筆で食べていけるのはごく僅かなんだなと。過去の栄光にすがり、いつまでも権力があると思い込む人がいるのは、どの業界も一緒。作家も然り。楽な仕事はないけど、出版業界も厳しい。2018/01/14