内容説明
愛に飢えた、ある少女の魂の遍歴を綴った成長物語。
著者等紹介
吉屋信子[ヨシヤノブコ]
1896年、新潟市生まれ。栃木高等女学校に在学中から少女雑誌に投稿。1916年から『少女画報』に連載された「花物語」が女学生の圧倒的な支持を得、ベストセラーになる。1919年、長篇小説「地の果まで」が大阪朝日新聞の懸賞で一等に当選。1936年から新聞連載された「良人の貞操」が好評を博す。少女小説、純文学、歴史小説、随筆と幅広く執筆活動をおこなう。1952年「鬼火」で女流文学賞、1967年に菊池寛賞を受賞。1973年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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小夜風
31
【図書館】「みっともない子」「死んでもいい子」「おでしゃの子」「きばつな子」……主人公の麻子は前半ずっとこんな風に描写される子で、読むのがしんどくなるくらい辛かったです。それは、自分の子どもの頃にあまりにもそっくりだったから……。愛されない子、愛を知らない子は、こんな風になるしかないのだと、これでもかと思い知らされるような気がしました。だからこそ、終盤の救われるような展開が本当に心に染み入りました。変に力まずあなたはあなたのままで良いのだと、優しくいい子いい子してもらったような読後感でした。2015/11/09
Kaoru
5
容貌が美しくないという事実は、その容貌だけでなく、自意識や思考にも影響する。かなり前の作品なのに、展開も言葉も易しくて読みやすかった。この時代はやはり、上品を感じる。2022/12/31
みすたー
5
麻子ちゃんが成長していく過程は、辛い場面も多いですが、綺麗な結末に感動しました。かなり昔に書かれた本ですが、思春期の感情は今も昔も変わらないのだなと思いました。おばさまの言葉はどれも胸を打ちます。2018/04/18
ひとみ
5
美しいものの好きな母の期待に反して個性的な容姿の子として生まれた麻子。親の関心は美しい姉や妹に注がれ、麻子は常に愛情を求める自信の無い子に育つが、あることがきっかけで勝気ででしゃばりな性格になり、また一転して感傷的で弱虫な性格になる。遍歴の果てに自分自身と向き合い成長するのだった。自己肯定感の無さと今で言う所のイタい子の関係を既に見抜いていた作者の眼力に驚く。感傷的な序盤の空気を変えた親友の藍子さんの快活なキャラクターがよく、この子が麻子の本来の個性を受け止めてくれていたことにホッとする。2016/01/13
うつぼ
5
1896年に書かれたとは思えぬ、吉屋信子の少女小説。愛着の問題であるとか、家族の問題であるとか、人間関係やそれによる本人の自意識の問題であるとかは、近年になってようやく考えられ始めた問題かのように思っていたけれど、この本にはそういった問題がすでに細かに描写されていて驚いた。そして捻くれてしまった主人公「麻子」の自意識が、親戚や友人や友人の母など、自分の直接の家族以外から愛情をうけて成長していく様子が丁寧に描写されているのにも驚いた。吉屋信子は心理学の素養があったのだろうか。。2015/11/12