内容説明
野暮ったい測量器具を片手に荒野をゆく2人の中年男、その名もミラーとピンチョン。くしくも現代アメリカを代表する作家と同じ姓をもつ、彼らのゆく手に待ち受けるのは、女、ワニ、奇蹟、金星、そしてオオカミ少年。ウィーン発、新世紀型エンターテインメント。世界の崖っぷちをあざやかに描くオフビートなグラフィックノベル、ついに初来日。
著者等紹介
マウラー,レオポルト[マウラー,レオポルト] [Maurer,Leopold]
1969年、オーストリアのウィーンに生まれる。ウィーン大学で社会学を専攻し、ウィーン美術アカデミーで絵画とグラフィックアートを学ぶ。1998年以降はフリーランスのアーティストとして、アニメーション、コミック、イラストなどの分野で幅広く活躍している
波戸岡景太[ハトオカケイタ]
1977年、神奈川県に生まれる。慶應義塾大学大学院後期博士課程修了。博士(文学)。現在、明治大学理工学部総合文化教室准教授。専攻、アメリカ文学・文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スミス市松
16
「ピンチョンの作風は漫画っぽい」とはよく言われるが、こうしていざ漫画で読んでみるとなるほど確かにシュールな笑いが胸を打つ。『メイスン&ディクスン』の測量珍道中をオマージュとして所々に下水道ワニやらバナナやら狼男やらが登場し、どれも元々の小説内のエピソードからは意図的にずらして描いているのでその都度ズッコケる。だがそれゆえ、妙に風通しがいい。伏線の回収も本家さながら鮮やかで、全体的にはペーソス漂うしょうもない話なのだが読み終えたあとには謎の感動が生まれる。2019/06/26
三柴ゆよし
15
ミラーとピンチョンというアメリカ文学の二大有名人(のファミリーネームを持つふたり)が南北の境界線を劃定していくロード・ノヴェル、と聞いてまず思い浮かべるのはトマス・ピンチョンの大長篇小説『メイスン&ディクスン』であり、大陸測量珍道中という物語の大枠以外の部分でも、本書のエピソードの多くは、ピンチョン作品の明らかな語り直しになっている。とはいえこのダウナーなコミックの特色は、ピンチョンの挿話を意識的に誤読し、パラレルな相へと移行させることで生じるズレをこそ駆動力とし、新たな物語を呼び込んでいくところにある。2018/04/26
Ecriture
11
ヘンリー・ミラーとトマス・ピンチョンというアメリカ文学の父たちとドイツの青年マウラーは話ができるわけではない。しかし、一緒にできることがないわけでもない。『メイスン&ディクスン』を下敷きに、『V.』の下水ワニ、『ヴァインランド』のゴジラ、『メイスン』の巨大チーズと機械鴨などのオマージュを散りばめた、柴田元幸ならオーストリア発の弥次さん喜多さん紀行録と呼んだかもしれない(?)作品。測量の途中でアフリカ大陸に渡るという『メイスン~』にはない展開と、過去の亡霊に縛られない・亡霊を縛らないという展開が見所。2014/01/24
タカラ~ム
4
ミラーさん、ピンチョンさんという名前でピンとくる方は結構なアメリカ文学好きなのだろう。もちろん、ヘンリーでありトマスである。ただ、本書に登場するのはヘンリーでもトマスでもない。ミラーさんは土木技師、ピンチョンさんは天文学者。二人は領事の依頼で境界線を測量して引く作業の旅をしている。途中、ゲスイドウワニを仲間に加えて測量の旅を続ける彼らには、それぞれにちょっと悲しい過去があり、行く先々でちょっとした事件も起きる。なかなかに刺激的なグラフィックノベルである。2013/05/03
龍國竣/リュウゴク
3
天文学者のピンチョンと、土木技師のミラー、現代アメリカを代表する作家に由来する姓をもつ二人の主人公。しかも、話の内容はピンチョン「メイスン&ディクスン」を裏返しにしたもの。ここでもピンチョンの小説のような謎解きを存分に味わえる。登場するワニを見て、佐々木マキの「やっぱりおおかみ」の狼と似ている気がした。2013/05/12
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