内容説明
書きかけの小説から、主人公イカロスが逃げ出した!?彼を追跡する探偵モルコルや、他の作家たちのもとから逃げ出してきた登場人物たちも街に紛れ込んでのドタバタ捜索劇。定められた運命を逃れた彼らの行く末は?主人公のいなくなった小説の結末は?―小説の可能性を追求し、言葉で遊び続けたクノーの遺作。
著者等紹介
石川清子[イシカワキヨコ]
千葉県生まれ。立教大学文学部卒業。ニューヨーク市立大学大学院博士課程修了。現在、静岡文化芸術大学教授。専攻、フランス語圏文学、フランス近現代文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かわうそ
27
メタフィクショナルな手法を駆使したドタバタ劇はエンタテイメント性が高く、戯曲風に表現される軽快な会話もコントのようでとにかく楽しい。タイトルのとおり自由にあこがれる若者のちょっと苦い冒険譚になっているのもグッド。非常に面白かったです。2019/04/18
兎乃
19
昨年から今年1年、水声社クノー・コレクションを存分に楽しめた。ほとんどの作品は再読だったけれど、新訳は各々に果敢な挑戦をしており、大満足のコレクションだった。一読者として、水声社さんに感謝!「地下鉄のザジ」の事を話すと"何をいまさら。クノー?"って反応も私の周辺ではあった。ふん、おしりブーだっ!本書「イカロスの飛行」はクノーの遺作。以前の滝田訳はホントに面白くて何度も再読。今回の石川訳も素敵。あなたも、原稿から逃げ出した主人公を探してみてほしい。可笑しくて哀しくて、チャーミングな小説です。 2012/12/31
クサナギ 「読んでる本」=「バイブル本」
3
堅い感じかと思っていたら、意外と楽しく読めた。あとがきにあったけど、原題が『イカロスの飛行』とも『盗難』ともとれるというのは面白い。2013/09/01
ひとみ
3
書きかけの小説から抜け出した主人公・イカロス。彼を見つけ出したい作家と作家に雇われた探偵。一旦捕らえられたけれど小説に戻されたイカロスだが逃亡中にみた自動車が忘れられずに再び逃亡。そのうち他の作家の小説から抜け出した登場人物達が増え出すというドタバタ。戯曲形式を用いたり、フランスの小説事情に対する言及もありそうなんだが、ドタバタ小説として楽しんで読んだ。こういう作者と登場人物がやり合うような小説が自分は好きらしい。2013/01/22
ぴゃっぴゃ
2
全体に可笑しくてほのぼのなんだけど、どこか悲しさがつきまとう。作家連や探偵、医師の間抜けぶりに対して、抜け出した登場人物たちは純粋無垢な世間知らずだけど結構うまいことやってる気が。2012/11/18