内容説明
ルーマニアに生まれ、疾走するシュルレアリスムの時代を、“遅れ”のアヴァンギャルドとして生きたヴィクトル・ブローネル。ある事件によって左目を失ったかれの画業は、変容するのかしないのか?豊富な図版を存分に生かした緻密な検証によって、画家をシュルレアリスムの新たな地平に奪還する野心的な試み。
目次
第1章 “遅れ”のアヴァンギャルド
第2章 犬と狼のあいだに
第3章 不純なる風景画家の登場
第4章 燐光をおびた実体
第5章 預言する形象(あるいはM氏の奇妙な事例)
第6章 嘘の潜勢力(あるいはB氏の奇妙な事例)
第7章 魔術的芸術のほうへ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
c
0
一頁目から溢れ出る蓮實重彦臭に、恐らく誰しも苦笑するだろう。しかし、直接的に影響を受けている世代ではない。もしかすると、これは意図的に模倣しているのか?という疑いが、ヴァレリーを冒頭に引いた第五章を読んだ段階で浮かんだ。画家が友人同士の諍いに巻き込まれ左目の視力を失うという、神話めいた偶有性に対峙するために、ハスミ的な虚構化を必要としたのではないか、と。ブローネルがピカソやダリのエピゴーネンから脱するのは、その事故以降のことなのだ。で、その画風は海を越え、アニメ作家の水江未来にも影響を与えているようだね。2011/06/19