内容説明
第二次世界大戦前夜。ブラジルの密林からヴァージニア・ウルフのもとにやってきた、世界一小さなサル“ミッツ”。日記や書簡などの伝記的事実を駆使した深い洞察力と想像力で織りなす、ユーモアあふれる新しいフィクションの試み。
著者等紹介
ヌーネス,シークリット[ヌーネス,シークリット][Nunez,Sigrid]
1951年、ニューヨークに生まれる。バーナード・カレッジとコロンビア大学に学び、ブッシュカート文学賞など数々の賞も受賞している
杉浦悦子[スギウラエツコ]
1947年、福島県に生まれる。東京学芸大学大学院修士課程、広島大学大学院博士課程修了。現在、多摩大学教授。専攻、アメリカ二十世紀文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のりまき
23
読んで良かったなあ。穏やかで美しい文章。静かで優しい日々。レナードは理想の夫のようだけど、使用人に不寛容で時にどうしようもなく俗物になる。ヴァージニアは時々とても扱いづらくなるし、そういう人間臭い所も好きだなあ。住んでいた場所から拉致されてイギリスまで運ばれるミッツの心細さよ。あなたは幸せだったよね。彼女らのもとで。2025/03/28
Mana
4
ヴァージニア・ウルフのペットのマーモセット(南米の猿)を主役にした小説。作者の目線に愛情が感じられて、ペットを飼ったことのある人は気にいると思う。全体的に抑えた筆致で読み心地が良い。ウルフ夫妻の関係やヴァージニアの人柄も魅力的に描かれてる。前に読んだ「めぐりあう時間たち」のヴァージニアは精神的に不安定で危うい感じをひしひしと感じたけど、このヴァージニアは自殺しそうな感じではない。2019/11/01
きゅー
3
ヴァージニア・ウルフの夫が飼っていたマーモセットを中心とした擬似伝記小説。根拠資料をつぶさにあたり、手に入れた数少ない情報を元に、夫婦の私生活をみごとに再現している。マーモセットや飼い犬の感情、夫婦の些細な会話など、資料が残っていない部分の描き方に、著者のヴァージニア・ウルフへの愛情をひしひと感じた。だからといって、決してウルフ夫妻を神格化したりはせず、嫌な部分も書き表しており、読み進めるうちに、彼らの声まで聞こえてくるかのようだ。ヴァージニア・ウルフのファンでなくとも充分に楽しめる小説だと思う。2011/09/16
timeturner
2
ウルフ夫妻が飼っていた小猿の擬似伝記。なんともいえず魅力的な小品だ。情景・心理を瑞々しく描き出す文章表現力、読者を混乱させることなく巧みに視点を変えて語る技は秀逸。2013/08/09
えりや
0
ウルフの著作を「読むというよりは食べて」血肉とした著者だから書けた作品だったのだろう。私自身はウルフの作品は読むのにひどく時間がかかって、正直に言えば好きな作家ではないのに、ウルフに関するフィクションには思わず惹かれるし、彼女の著作も、時々読まなければいけないという思いにかられる。この作品の彼女は、時にとても私に似ている。2012/06/27