内容説明
トロント、一九三〇年代、移民たちの夢。橋から落ちる尼僧、受けとめる命知らずの男。失踪した大金持ち、あとを追うラジオ女優…。それは、パトリックが若い娘に語って聞かせる“官能”と“労働”の物語。
著者等紹介
オンダーチェ,マイケル[オンダーチェ,マイケル][Ondaatje,Michael]
1943年、スリランカに生まれる。十一歳でイギリスに渡り、十九歳の時、カナダのモントリオールに移住。トロント大学に学ぶ
福間健二[フクマケンジ]
1949年、新潟県に生まれる。詩人。首都大学東京教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きゃれら
15
「イギリス人の患者」に出てくる主要人物の前日譚ということで手に取ったが、びっくりする読みにくさ。解説に「一般読者に受け入れられる前の」とあり、なるほどでした。詩の言葉が詩の文体のまま使われ、物語的なつながりを無視して進んでいくので、一文一文確かめながらしか進めない。ものすごく粘り強く投げださずに読めたのは偉かったと自分をほめる。カナダという国、トロントという都市、あるいはそもそも文明が、巨大工事の犠牲となった多くの人々の屍の上に成立していることを、犠牲にされた「よそ者」の視点で描く叙事詩といえる。2024/02/04
ぱせり
14
始まりは少年時代。美しい、あまりに厳しい暮らしなのだけれど、牧歌的で明るい輝きがあるあの日々。それが物語の波の間に間に見え隠れする。見失いそうになるその日々が鮮明によみがえってくる。人は旅を続けなければならない。その途上でだれかかけがえのない人の人生の礎になったりもするのだろう。 2014/10/06
saeta
6
起承転結を重視する読み手には、やや読みづらい作品かもしれないが、唐突に始まるエピソードが後に思いも寄らない場所で繋がったり、続きはこれ以上無いのかとヤキモキする幻想的に語られる話があったり。オンダーチェは本当に期待を裏切らない作家だと思う。次の「イングリッシュ・ペイシェント」の主役であるハナの少女期も出て来たり、そちらを読まれた方はこちらも是非。2021/07/02
刳森伸一
4
素晴らしい小説だった。。モザイク状に分断されて提示される物語の断片を脳内で繋ぎ合わせる必要があるが、それが面白いところであるし、何より『イギリス人の患者』と同様、一つ一つの文章が際立っていて、読んでいるだけで不思議と心が躍る。2025/02/23
与太
2
面白いのに、わからない。わからないのに、面白い。 そも、どんな話に至るのかまったく不明なままで読み始めて、だんだんと掴めていくようで、やっぱりいつまでも不明なままなのに、読み進めずにはいられない、この感覚がたのしい。2019/10/14
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