内容説明
人は人を殺したがらない。殺人を悪だと知っている。しかし、それでも現にこの世には、悲惨な戦いや虐殺がある。人はなぜ、平和を祈りつつも、戦争やテロを行なうのだろうか?二人の宗教学者が「戦争」と「宗教」に共通する人間の矛盾や葛藤を多様な角度から論じる。人間と社会、戦争と平和について考えるための入門書。
目次
1 戦争の現実(人は人を殺したがらない;それでも戦争はなくならない;戦闘における生理と心理;宗教と戦争の関係)
2 戦いの中の矛盾(「人を殺すな」か「人を殺せ」か?;聖書・キリスト教における「平和」;軍事大国アメリカの宗教;日本のクリスチャンと戦争責任;キリスト教史の中の暴力と迫害;戦場の聖職者たち)
3 平和への葛藤(テロをめぐる善と悪;戦うことは絶対に許されないのか?;兵役拒否と宗教;世界の諸宗教の平和運動)
著者等紹介
星川啓慈[ホシカワケイジ]
1956年愛媛県生まれ。筑波大学第二学群比較文化学類卒業、同大学大学院博士課程哲学・思想研究科単位取得退学。博士(文学)。現在、大正大学文学部教授。専門は宗教哲学
石川明人[イシカワアキト]
1974年東京都生まれ。北海道大学文学部卒、同大学大学院博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。北海道大学助手、助教をへて、現在、桃山学院大学社会学部准教授。専門は宗教学、戦争論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
megumiahuru
44
おそらく大学の教養課程あたりを意識しているのだと思いますが、宗教と戦争についてのテキストとしては、実に平易に、かつしっかりとポイントを押さえて書かれてあり、この分野での入門書としてはファーストチョイスにすべき一冊です。「第1章人は人を殺したがらない」「第2章それでも戦争はなくならない」-平和を祈る一方で、なぜ戦争が行われるのか? 戦争という人類的営為の多面性と複雑さ。それでも、戦争をなくすための努力と祈りをあきらめてはならないと思わされました。2014/11/07
壱萬参仟縁
21
学問は人の幸せを保証しません(3頁)。高学歴でもワープアだから。石川博士は常勤だからいいんだけども。宗教:戦争、武力衝突を推進、戦いの正当化(傍点)の側面もある(22頁)。二律背反をどう考えるか? クレフェルト:心理の\奥底に本来的に殺人、戦争と結びつく悪魔が存在(56頁)。制御、暴走が問われる。ダスグプタ:平和欠如とは戦争なくても苦しみ死ぬ状態(105頁)。ガルトゥング:積極的平和とは社会正義機能、公平な医療、安定、公正な法執行、福祉充実(105頁)。2015/03/14
とく
6
宗教学者2名が共著で戦争を語る。テーマは正に書名の通り。多くの宗教は争いを憎み、隣人愛を説き、平和を希求する。しかし、世界中で争いは絶えない。闘争への嫌悪と同様、大切な人の命や平和を守りたいという考えは人間として自然な感情であり、その為なら闘争も辞さないという選択肢もあり得る…。そういう人間の矛盾(業?)を、著書達は宗教と戦争の関わりを中心に豊富な例を挙げて読者に問いかけていく。少ない頁数、平易な文章で読み易く、軍事的な引用・例示も的確。安易な反戦思想とは次元が違う。見事な書だと思う!2014/08/04
0422
0
いい。2014/06/21