内容説明
本書の目的は、N.チェイターが提唱した思考のサイクル論に基づいて、「正しい」“脳と心の接続法”を提示するとともに、そのことを通して元々、存在し(得)ない、「無意識的思考」を否定・消去することにある。従来、精神分析・心理学・人間科学などは心と脳の「正しい」接続法を示すどころか、脳の情報処理機構を軽視した「深すぎる」もしくは「浅すぎる」、心のモデルを提示してきた。ところが、脳は並列的計算方式という特性を持つことから、「一回につき一つのタスクしかこなせない」のであり、心は脳と接続に際してそうした制限を受けざるを得ないのだ。こうした脳の摂理を知悉した上で、脳と心の「正しい」接続法を示したことに、思考のサイクル論の秀逸さがある。
目次
1 N.チェイターの思考のサイクル論に学ぶ(思考のサイクル論についての概念整理;思考のサイクル論が前提とする脳のメカニズム・特性;思考のサイクル過程―「現在」を中心に;思考のサイクルにおける過去への接近―記憶・想起;思考のサイクル論における心―感情を中心に)
2 「無意識」という論戦の場―思考のサイクル論との対話1(「無意識的思考」の批判的検討;三つの無意識)
3 「想起」という論戦の場―思考のサイクル論との対話2(生態学的知覚論における記憶・想起;分子脳科学における記憶痕跡と想起;補論 脳の情報処理機構を介在させた精神分析の記憶・想起論―マルチ・ネットワーク・モデルを中心に)
4 思考のサイクル論の現在―筆者が学び取ったもの
著者等紹介
中井孝章[ナカイタカアキ]
1958年大阪府生まれ。現在、大阪市立大学生活科学研究科教授。学術博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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