出版社内容情報
中国特有の森林所有・経営形態である「集体林」。その成立過程や現状とともに、計画経済期から現在に至る木材流通と消費構造について、詳細に分析・解説を加えています。
第1章 中国林業の概況と集体林の位置
第1節 中国における森林資源と林業の概況
第2節 南方集体林の現況及び位置
第2章 集体林の成立と計画経済体制化の経営
第1節 集体林の成立
第2節 計画経済期における集体林の経営形態
第3節 小 括
第3章 「計画経済期」における南方集体林地域の木材流通構造
第1節 社会主義制度の確立と木材流通システムの形成
第2節 完全統制期の木材流通
第3節 木材の流通機構・市場組織
第4節 配給材の価格形成
第5節 「計画経済期」における木材流通構造の特徴と弊害
第4章 集体林の経営体制改革
第1節 全国経済改革・開放の背景
第2節 全国経済改革の進展
第3節 林業経営体制改革の過程
第4節 集体林の株主会経営と問題
― 福建省三明市改革試験区を事例として ―
第5節 林業経営体制改革の徹底化
― 「産権」とめぐる問題・産権の再明確化 ―
第5章 「経済改革期」における木材市場の再編
第1節 木材市場再編の背景
第2節 木材消費構造と需給
第3節 木材流通構造・市場組織の再
森林経営は個別化・個別請負化とともに、統一(集団)経営を維持するなど多様な形態をとり、生産請負制が導入された。そのなかで、林業株式会社が統一的に経営するものとして注目されている。これは福建省三明地区で試行されたもので、「株は分けるが山は分けない。利益は分けるが森林は分けない」(分股不分山、分利不分林)を基本的な方針として、森林経営の零細化を防ぎ、会社経営を取り入れ、市場経済化に対応しつつあるものである。
市場経済化にともなって、木材の生産は効率的に拡大した。これまでの伐採には無駄が多く生じていたといわれるが、それがなくなった。これは加工・流通局面においても同様なことがいえる。国有木材企業の私企業化は、効率的な生産体制を模索するようになっているし、最終消費者のニーズへの対応も不可欠になっている。こうした市場経済の現状を、本書はビビッドに描いている。
2000年8月22日 村嶌 由直