内容説明
ピラカンサの赤い実に集まる美しいヒレンジャク。その姿を楽しみにしてきた老人と少女の交流を描いた表題作。きらきら輝くドングリを拾ったためにグーしか出せなくなったクマの子は、ずっとチョキしか出せなかった沢ガニの子の気持ちを知って…(「じゃんけんグー」)。戦争の時代を支え合い懸命に生き抜いた家族のドラマに平和への祈りを込めた「桜の振り袖」など珠玉の10篇。小学校中学年~大人の皆さんにも。
著者等紹介
鳥居真知子[トリイマチコ]
1951年三重県に生まれ、兵庫県の芦屋で育つ。1974年甲南大学文学部卒業。出産後、子育ての合間に児童文学を書き、「おはようおじさん」が三木市立図書館でビデオ化される。1992年甲南大学大学院入学。修了後、同大学と山手女子短期大学で非常勤講師として勤め、退職後、再び児童文学を書きはじめる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yomineko@ヴィタリにゃん
60
10編の短編。どれも良かった。いじめ問題のお話、戦争のお話。新美南吉記念館館長さんのご推薦文通り、心と心の繋がりをとても大切にした作品ばかりでした。2022/05/23
ベーグルグル (感想、本登録のみ)
42
「赤い屋根」つ続き2冊目。人間や動物の心の触れ合いをテーマにした10の短篇。相手を思いやる気持ちや、優しさに溢れる物語ばかりでした。一番好きだったのは表題作の「ピラカンサの実るころ」。ラストは他とテイストが変わり、戦争を生き抜いた家族のお話でした。この人の表現がとてもいい。2022/05/24
anne@灯れ松明の火
27
鳥居さん、他の作品が良かったので、予約。つながりのない、短いお話が10編。人間の子どもや動物を主人公に、思いやり優しさを描く。死にまつわるお話も多いが、どれも温かさに包まれている。「じゃんけんグー」カニの気持ちに気づくまでの過程がとても自然で、その後のみんなの行動にほっこり。「桜の振り袖」戦争の恐ろしさ、哀しさを訴える。戦争を知らない世代が多数を占めるようになった今、このような作品は大切。鳥居作品、もっと沢山の人に読んでほしい。2021/10/09
FOTD
17
表紙の絵が可愛らしいし、本を開けてみたら文字が大きくて眼に優しいので読み始めた。他者との関わりを描く短編集だった。どの話もそれぞれちょっとテイストが違う。どの作品も素晴らしかったが、表題作の「ピラカンサ〜」は特に良かった。こういうネタなら動物愛護や環境の話に持っていくのが普通だろうが、人との関わりに焦点をあてたことで温かい作品になっている。最後の話を読み終えて、戦争は絶対にしてはいけないという気持ちで本を閉じた。2020/06/25