内容説明
「峠の桜が咲いているうちでよかった」。嫁入りの日、満開の桜の下で新郎の大石内蔵助が馬を止めて待っていたことを妻・りくは何度も思い返す。討入の後、内蔵助・主税親子は忠孝の士として称賛されるが、りくと遺児になった大三郎には哀しみに満ちた人生が待ち受けていた。涙なくしては読めぬ第25回吉川英治文学賞受賞作品。
著者等紹介
平岩弓枝[ヒライワユミエ]
昭和7(1932)年、代々木八幡宮の一人娘として生まれる。30年日本女子大国文科卒業後、小説家を志し戸川幸夫に師事。ついで長谷川伸主宰の新鷹会へ入会。34年7月「鏨師」で第41回直木賞を受賞。平成3年「花影の花」で第25回吉川英治文学賞受賞。10年、第46回菊池寛賞を受賞。16年、文化功労者。19年「西遊記」で毎日芸術賞受賞。28年、文化勲章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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元気伊勢子
7
平岩氏の細やかで美しく、優しさと細やかさに溢れた文章がとても素晴らしく、一気に読んだ。りくは、夫亡き後、子供達を立派に育てなくてはと奮闘する。優秀な両親と兄のプレッシャーに押し潰されて、酒浸りになる大三郎が気の毒だった。2022/01/15
まる
6
赤穂浪士討ち入りの話しを映画やドラマで観る度に 義士達の遺族はそのあとどう生きたのかが気になっていた。中でも大石りくは中心人物の妻なので、生き抜くのはさぞ厳しいことだったろうと思っていた。それを突きつけられた感のある小説だった。偉大な親を持つだけでも大変プレッシャーなのに、日々母親からも父の名を汚すなと言われたら、素直な自分は育たなくなるだろう。妻の立場にしても毀誉褒貶渦巻く中では本当の自分を保つことさえ難しいだろう。りくと大三郎の本当の姿は解らないが、さもありなんと思われる哀しい物語だった。2025/04/21
うさみみ
5
大石内蔵助の妻、りくのお話。 お嫁に来て、いろいろありながらも穏やかに暮らしていたが、殿である浅野内匠頭が刃傷沙汰。それ以降混乱に巻き込まれていく。という内容。 長男の主税が討ち入りに参加するあたりは涙なしでは読めません!我が家にも15歳の息子がいるので、重ねてしまいました(涙)読むのが辛かったです。 (歴史通の息子に話したら、「それ、昔なら当たり前だからww今とは価値観が違うのwww」と鼻で笑われましたが。。) せっかく生き残り再び武士になれたのに、やさぐれている大三郎も切ない…。 2021/02/18
雄策
3
忠臣蔵の物語は案外少ない中で、さらに内蔵助の妻りくの物語。男の子としては、討ち入りに向かって動き出す場面は、心躍るものがあるんだけれど、なぜ、松の廊下の事件後起きてしまったか、なんてかんがえるともやもやが過ぎるし、ホント切ない。そう考えると、遺族もなかなか辛いよね~。大三郎なんてあの事件さえなければきっと普通の生涯を送れてたんだろうし。ふと何もなかった時の主税にも思いを馳せてしまった。。。。。2024/06/03
カルバンク
1
はっきり言って 浅野の殿様が家臣を思って我慢してくれたら……と思う。後先考えず うるさ方のうんちくじいさんを切り付けず公家を機嫌良く帰せられたら。藩も潰れず貴重な命も奪われなかったろうに。敵討ちで(本意でないにせよ)華々しく散った男達の周りには不幸な人知れずな家族がいた。忠義の人と讃えられた良雄の三男は見たこともない父親の重過ぎる存在に潰される。本当に大三郎が気の毒に思う。そして、さらに彼の墓は原爆で壊され戦後、再建されたらしい。大石良雄の妻りくが主人公だが、気の毒な三男坊の方に感情移入してしまった。2024/11/26
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