内容説明
ねこの話はどこの国でも多いようですが、この物語のように、冷静で、皮肉な目をもったねこが描かれることはまれで、世界的な書評紙『タイムズ文芸付録』でも、まず、その点が高く評価されました。まったく、「かわいい」ということばは、このジャクソンにはどう考えても不向きで、臨機応変、人間を利用してかかるねこは、ときに人間に眉をひそめさせるかもしれません。とりわけ、ねこを人間の所有物と考え、「かわいらしい」を連発してきた人々には…。けれど、人間の勝手な思いこみどおりに動物が生きていようはずはなく、もしそうならば、ねこはねこではなくなってしまいます。同じことは、人間同士、おとなと子どもの場合にもいえましょう。それにしても、必要なときに、適当に人間を利用しながら、あくまでも本来の自分を失わずに生きていくジャクソンのふてぶてしさは、たしかに、これまでの児童文学にはあまり見られないもので、けれど、それは、まだ世間を知らない、無邪気なマリリンと好対照をなして、作品をひきしめ、全体をこくのある軽妙な喜劇に仕立てあげました。小学校中・上級向き。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケロリーヌ@ベルばら同盟
66
【猫本を読もう読書会】6月の素敵な昼下がり、野の家通りの裏庭でゆっくり微睡んでいた立派な黒猫ジャクソンは、真っ白なお嬢様猫のマリリンのわめき声に眠りを覚まされました。この甘えん坊のチビ猫は、飼い主一家に置き去りにされてしまったようです。孤高の野良猫ジャクソンですが、お腹を空かせ、不安でパニックに陥っている彼女を突き放せず、二人の道行きが始まります。ジャクソンの処世術、マリリンの厄介だけれど何とも愛らしい天真爛漫さが楽しく、心踊る読書となりました。何だか、映画の『レオン』を思い出しました。2019/02/24
花林糖
21
(図書館本)野良猫ジャクソンが若い家猫マリリンを教育する物語。甘々マリリンの世話を、辛抱強く世話するジャクソンがなかなか男前。2016/05/05
mntmt
19
世慣れしているジャクソンと箱入り娘っぽいマリリン。会話がおもしろい。2016/06/14
iku
6
家族に見捨てられたとさわぐ若いネコのマリリンに、一人で生きていくすべを説いていくジャクソン。イッパイアッテナ的なかんじですが、ジャクソンはとても紳士的。「ネコは誰のものか、自分のものじゃないか」素敵な終わり方です。2015/01/06
光
6
野良猫のジャクソンは、生きていくために何人かの飼い主を持ち、その飼い主の好みの猫になりきって、食べ物をもらって生きています。タイトルから想像して、ラストは一番優しくて温かい飼い主さんの元で暮らすことになるものだと思っていましたが、予想は裏切られ、もっと素敵なラストが待っていました。想像以上に深く考えさせられる作品でした。2014/12/08