内容説明
食べ物にまつわる物語は、ヒトの歴史であり、価値観でもある。では、豚肉の消費量や牛の屠畜数といったデータを肉食というひとつの物語にあてはめた際、どのような「選択」が浮かび上がるのだろうか?機械化された食肉の大量生産、動物愛護、民族的な食習慣、そして菜食主義者でいること。これらが複雑に絡み合う「迷路」に生きる俊英作家が、綿密な取材のもと描く現代アメリカ社会のとある神話…。米国食肉産業のうんざりするような真実。
目次
第1章 食にまつわる物語
第2章 極論に走りがちだが、ほかの道はないものか?
第3章 覚えておきたい用語
第4章 闇のなかのかくれんぼ
第5章 言葉を失うインフルエンザの脅威
第6章 楽園の肉と汚物の物語
第7章 わたしの誓い
第8章 新たな物語
著者等紹介
フォア,ジョナサン・サフラン[フォア,ジョナサンサフラン][Foer,Jonathan Safran]
作家。2002年のデビュー作Everything is Illuminated(邦訳/『エヴリシング・イズ・イルミネイテッド』、ソニーマガジンズ)はアメリカで多数の賞を受賞し、世界10ヵ国で翻訳されている
黒川由美[クロカワユミ]
津田塾大学英文学科卒。英国留学後、通訳業、映像翻訳などを経て現在、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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GASHOW
5
人類は多くの生物を滅ぼしてきた。生きていけるのは家畜を無慈悲に食料にしている。一般人はその事実を実感しないように生活ができている。知らずにいることで、家畜の命をひどく扱っている。食料とするために育てているので、命を奪うことにかわりはないが、それまでのプロセスとして最短の時間で肉体を太らせ、高いストレス状態で一生が終わる。家畜からみたら人間は、人間からみた悪魔そのものだ。社会全体が知れば、倫理的なもう少しましな手段をルールによってしばることができるのかもしれない。2019/01/05
もりたのちゃんさえ
4
純朴なのでこの本を読んでからヴィーガン生活を決意した(前もペスコベジタリアンやってたんだけど、つわりで挫けた)。野菜が新鮮な状態でゲットできて、大豆製品に取り囲まれた生活を送っているからこそ、日本人がヴィーガンするのはとても簡単だと思う。この間、アメリカの黒人演説集を読んでて、人間が人間を奴隷として扱うことに私らの曽祖父ぐらいの世代は何も感じなかったのかってビックリしてしまったけど、きっと何世代か後になって、全てを放棄してまで肉を食べる人類は、すごい変だよねって言われるのではと思う。2019/02/12
Sugar
2
第7章ブルース 彼女(ニコレット)には現実は見てえない だけでも、みんな読んでみるべき2024/04/06
saoriの本棚
1
文学者のジョナサン・サフラン・フォアがこの本では緻密な取材に基づいて工場式畜産問題のルポタージュに取り組んでいて読み応えがあります。また、やはり彼の文学者ならではの視点や簡単な結論でない葛藤・逡巡は読者にも深い思索を与えていると思います。気候変動などで人間が環境や他の動物に与える影響を無視できない現代を生きる今、ここで書かれている事はもっと知られてほしい、読まれてほしいと思います。2022/08/23
志田健治
1
日本にいる人たちは食べ物に対してアメリカよりも深い思想があると信じたいが、身の回りを見渡すと(自分を含めて)自信が持てない。はっきり言って現代先進国では肉を食べる必要はないと感じる(日本も)。いいかげん目を覚まさなければいけない。現代の食肉は今人類が抱えている問題につながっているということがわかった。大企業の利益、それにつきる。だから我々市民こそが真の家畜なんだと思う。奴隷なんてものじゃない。我々は家畜だ。兎にも角にもダイエットに良い本。心も体も。2013/08/06