内容説明
哲学における議論は生活の現実に即応しているか、またそこで得られた知識はいかにして生活を変容しうるか―こうした具体的生から立ち上がってくる問題を常に意識しつつ、自由と選択、反省と陶冶、感情と義務等、自己と倫理という中心課題をめぐって独自の考察を進めたナベールについての初の包括的研究。サルトルやレヴィナス登場以前の20世紀フランス倫理学というわが国では未開拓の研究領域に挑んだ、貴重なモノグラフ。
目次
ジャン・ナベールの生涯と思想
第1部 自由の内的経験(自由意志の感情;自由の内的経験のプロセス)
第2部 反省による自己の創造(反省とはいかなる営みか;自由への信の形成―反省の効果(1)
行為の理由の変化―反省の効果(2)
道徳的人格の陶治―反省の効果(3))
第3部 感情と倫理(制度としての義務;道徳性と関わる感情;他者との交流)
結論
著者等紹介
越門勝彦[コエモンカツヒコ]
1973年奈良県に生まれる。2006年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)学位取得。現在、神奈川大学、成城大学、立教大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いとう・しんご singoito2
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人格と自己同一性は滑ったり転んだりの繰り返し・試行錯誤の反省を積み上げることで創り上げられ、その原動力は根源的肯定 affirmation originaireにある等々、ナベールの哲学の魅力を丁寧に紹介している。試行錯誤が深層学習の基本的な仕組みであることや、反省を再帰性と受け止めるとU.ベックの「第2の近代」にも通ずるなど、ナベールの先見性にも驚かされる。越門さんのs’appropriation(我有化)とappropriation(換骨奪胎)のご努力に拍手! 2021/03/05