内容説明
ナチスの国家的犯罪は単にヒトラーの強権のみにより遂行されたのではない。その背後には固有の文化的・民族的そして教育的要因がわだかまっている―当時の代表的な教育学者・哲学者の言説分析等をはじめ、多くの史・資料に基づき類書に乏しい「教育のナチズム化」問題を多角的に追求し、今なお権威主義に傾斜しがちな日本の現状に鋭く警告する、貴重な総合的考察。
目次
第1章 ユダヤ人問題から見えてくる教育の課題(ナチズム下での公と私;反ユダヤ主義と大学人の苦悩 ほか)
第2章 ナチズムの人種論イデオロギーと教育(ナチスのユダヤ人迫害の背景;東欧でのユダヤ人政策 ほか)
第3章 ナチス政権下の抵抗運動とユダヤ人学校(ナチス政権下での教育;ナチスの人種差別政策の背景 ほか)
第4章 戦後ドイツの歴史認識とナチス教育への反省(ナチズムの価値観・世界観は変革されたか;戦後ドイツの歴史教育と生徒の歴史認識 ほか)
第5章 ナチズムと教育の問題―罪と罰(人間はなぜ罪を犯すのか;罰のシナリオ;戦後ドイツの罪と罰の教育;戦後の知識人と教育学の課題)
著者等紹介
増渕幸男[マスブチユキオ]
1945年生まれ。上智大学大学院博士課程満期退学、教育学博士。日本女子大学教授、東北大学教授を経て、現在、上智大学文学部教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
札幌近現代史研究所(者。自称)
2
ナチスの教育政策とその反省に立った(はずの)戦後ドイツの歴史教育に焦点を当てた本。ナチズムの教育政策の詳述よりも、むしろ戦後(西)ドイツの教育はナチズムを克服できたのかに多彩な資料や文献を駆使して解明を試みている印象を強く持った。体系的な調査としては1960年代にラーシュらが行った調査のみに限られており、今日の状況とはかなり異なっていると思われるがこの年代からでも、ナチズムを克服できていないと思われたり、連合国の罪を持ち出してナチ・ドイツの人類史上最大の犯罪からの免責を得ようとする生徒もいるなど興味深い2020/06/18