内容説明
近現代の東中欧、とりわけハンガリーを中心とする地域の人びとの移動の歴史を研究対象としているが、本書はこの十年余に渡って取り組んできた第二次世界大戦期の東中欧の強制移動に焦点を当てたものである。ユダヤ人の強制移送、ソ連への強制連行、スロヴァキア南部のハンガリー系住民のチェコへの強制連行、セーケイ人の占領地への入植と難民化、ドイツ系住民の追放、チェコスロバキアとハンガリー間の住民交換、実際には実行されなかったハンガリーとルーマニア間の住民交換、追悼の記念碑と強制移動の歴史認識について各章で考察した。戦争と強制移動の問題に対して、各国の政策を越えて通底するメカニズムを究明し、被追放民による「生存の試み」を描いた。本書は現時点でのこのテーマに対する筆者の回答である。
目次
第1部 強制連行(ユダヤ人の強制移送;ソ連への強制連行と強制労働;チェコへの強制連行と強制労働)
第2部 占領と追放(セーケイ人の入植と難民化;ドイツ系住民の強制移動)
第3部 住民交換(チェコスロヴァキアとハンガリー間の住民交換;ルーマニアとハンガリー間の住民交換構想)
第4部 強制移動の歴史認識と歴史叙述(強制移動の記憶と歴史認識;強制移動の歴史叙述の変容)
著者等紹介
山本明代[ヤマモトアキヨ]
名古屋市立大学大学院人間文化研究科・教授。博士(学術)千葉大学大学院社会文化科学研究科(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
18
第二次世界大戦が勃発した1939年から10年間で東中欧諸国では4610万人が移動を強いられた。本書はハンガリーを中心にその強制移動のメカニズムを解明している。ユダヤ人の強制移動、ソ連への強制連行、ドイツ系住民の追放、チェコスロバキアとハンガリーとの住民交換など。ハンガリーの領土拡張と国民形成のなかでセーケイ人の入植も取り上げている。根底には戦後の開発と経済発展を目指す諸国家の意図が、各民族的マイノリティの強制移動(無権利状態の奴隷労働力確保)に拍車をかけた。入り組んだ人の動きを丹念に拾い集めている。2025/03/16