出版社内容情報
『北海道新聞』2011.3.20 「ほっかいどうの本」より
日清戦争から太平洋戦争へと続いた戦争のなかで,夫を亡くした女性たちが新聞や雑誌,小説や映画のなかでどう描かれ,変化したきたかを問う評論集。著者は札幌在住の防衛技官(看護師)。北海学園大学大学院での博士論文をもとにまとめている。
『軍事史学』2011年6月(第47巻第1号) 「文献紹介」より
(前略)本書は,日清戦争から太平洋戦争,そして戦後にいたる時期を対象として,戦争未亡人について考察している。いわゆる実証的な歴史研究ではない。日本ではとくに1990年代から2000年代にかけて学界の関心を集めるようになった,カルチュラル・スタディーズの表象論の著作として評価されるべきである。(略)読後の印象として,戦争未亡人論というよりも,戦争未亡人をあつかった作品群についてのメディア批評,文芸批評としての面白さが,本書の特徴と魅力のひとつだとも思った。(略)だが,戦争未亡人を正面にすえた研究を,表象論のジャンルでまとめあげ,特定の政治的・イデオロギー的メッセージで潤色せず,あくまでも著者個人の感性にもとづいてまとめあげているところに,ユニークさと活力を感じる。著者の言葉を借りれば,現代という「時代が未亡人に託した多様な思い」のひとつが,看護師として,研究者として,ほとばしるように生をまっとうしている著者を通して,この著作に描きだされているといえよう。 (評者:小菅信子)
目次
第1章 勝利の喧騒のなかで(あらまほしき姿;再婚可否論)
第2章 現実と幻想のはざま(貞女の道;茶筅髪への憧憬)
第3章 時代の片影(移れば変わる;敗戦下を生きる)
第4章 忘れえぬ記憶(止まった時間;抱えた重さ)
第5章 見えない鎖(生きぬく白ゆり;幸福という擬態)
著者等紹介
千代田明子[チヨダアキコ]
新潟県生まれ。1977年3月陸上自衛隊高等看護学院卒業。2002年3月北海学園大学人文学部日本文化学科二部卒業。2004年3月北海学園大学大学院文学研究科日本文化専攻修士課程修了。2007年3月北海学園大学大学院文学研究科日本文化専攻博士課程単位取得退学。2008年3月博士文学(北海学園大学)。1990年より防衛技官(看護師)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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