出版社内容情報
『中央公論』1999.4月号書評より
「この書物の優れた点は,奇跡をなす王といった民俗学的な観念をテーマにしながら,確かな史料を駆使して時代的な諸相を明らかにし,その観念をめぐる教会と王権の闘争を描ききったことである。これを読めば,最良の歴史書とはどのようなものであるかがおのずと理解できる。このような研究が1920年代に成立したということは,衝撃的ですらある。この本を読んだ後に西洋史の王権に関する論文を読み返してみると,どれもこの本を基に論を立てていることがわかる。最近,アナール学派の大著が次々と邦訳されているが,その中でも最高の1冊であると評価できよう。」
『月とメロン』(文芸春秋社) 丸谷才一著より(82頁~90頁)
「その点でわたしが脱帽したいほど感服したのは、フランス大革命が王権神授説の権威にどう影響したかといふマルク・ブロックの研究である。情報源の見つけ方が急所を突いてゐて、変化が数値的に歴然としてゐるので、有無を言はせない。」
内容説明
原題は「奇跡を行なう王たち」ないし「奇跡をもって病気を癒す王たち」の意。「王の奇跡」とは、王にさわってもらえば病気、それも瘰癧が治癒するという俗信のことである。中世、王の権威は必ずしも不動のものではなかった。特に、フランスの場合、カペー朝初期の王の実勢力など到底大諸侯に及ばなかった。にもかかわらず、この種の呪術的な権威は王のみが保持するところであった。この一見取るに足りない慣習を手がかりに、「宗教的なものから魔術的なものに至るまで何段階にもわたる王の観念」、「他の一切の権力に優越するだけでなく、全く別個の次元に属する権力」を解明した。
目次
第1編 起源(瘰癧さわりの始まり;王の治癒能力の起源/中世前期の聖なる王権)
第2編 王の奇跡の威光と変遷(十四世紀末までの瘰癧さわりとその声望;イギリス王権の第二の奇跡/治癒の指輪;奇跡を起こす聖なる王権/瘰癧さわりの起源からルネサンスまで ほか)
第3編 王の奇跡の批判的解釈
補論(英仏の財政記録に見る王の奇跡;図像資料;王の塗油と聖別の起源 ほか)
感想・レビュー
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