感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまぞう
1
著者のことを知らずに読んだが、これは詩であるよりは、ヒロシマについての証言と告発のドキュメントだと思った。一瞬で炭になった者も、全身が焼けただれ苦痛に呻きながら溶けるようにして死んだ者も、かつてそこに生きていた。原爆という絶対悪が広島に落ち、ヒロシマに変えてしまうまでは。そうした無数の無名の人びとの歴史を私たちは決して忘れてはならず、何度でも思い出さなければならない。このように強く訴えかけてくる本書は、さながら詩によって刻まれた、怒りにみちた慰霊碑である。所収の「生ましめんかな」が、とりわけ魂をゆさぶる。2022/06/19